みえアカデミックセミナー2022
放送大学三重学習センター
「子育てのABC ー応用行動分析理論からー」 の事業報告

開催日
2022年7月29日(金曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時10分まで
講師
放送大学三重学習センター 客員教授 山口 昌澄さん
参加人数
44名
受講料
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和4年度は7月14日から8月27日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」(1996年スタート)から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、19年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。
※令和4年度は2セミナーの中止により13セミナーを開催しました。


令和4年度の放送大学三重学習センター公開セミナーは、放送大学三重学習センター 客員教授 山口 昌澄さんを講師にお迎えしました。

放送大学三重学習センター 客員教授 山口 昌澄さん

**************************【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
学習心理学にルーツをもつ「応用行動分析(ABA)」は、主に療育現場の発達支援において効果的とされる手法です。子どもの気になる行動の改善や、やる気を高める方法等について、紹介・解説していきます。
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講演の様子1(2022年7月29日)

はじめに、理路整然とした答えがないため難しいと感じる人も多い「子育て」に関わる人の悩みを語られ、その上で、子育てにおいて子どもの内的・心的要素に注目しがちであるという問題点を指摘され、子ども一人ひとりの育ちや学びにつながる「子育て」となるように、子どもの「行動」そのものに注目し、客観的に考える必要性について説明していただきました。
続いて、「応用行動分析」とはどのような学問かについて、「心理学的知見」というキーワードをもとに、心理学の理論に基づいて子ども側だけでなく指導する側に対する理論・手法を組み込んだ総合的な育ち・学びの支援方法であることや、療育現場での効果があったこと、現在は企業の新人研修など幅広い現場で活用されていることについて教えていただきました。
また、「応用行動分析」を語る上で重要な、行動分析学の創始者であるアメリカの心理学者B・F.スキナーという人物についても詳しく教えていただき、特にスキナーが理論化した「オペラント条件付け」についても実験の映像を交えて解説していただきました。

講演の様子2(2022年7月29日)

そして、演題にある「ABC」理論について、「三項随伴性」という人の行動は何らかの条件「A:先行刺激」を受け、結果「B:行動」が起き、さらに行動に影響を受けて「C:後続刺激」が引き起こされ、A→B→Cが循環して形成されていくのだと説明していただき、子育てにおいては「B:行動」にアプローチしがちだが、応用行動分析では「A:先行刺激」と「C:後続刺激」の改善や調整を重視すると説明していただきました。そして、具体例として子どもが教室を飛び出したり、玩具を買って欲しいと駄々をこねたりした場合の大人の対応について応用行動分析的視点から解説をしていただきました。

さらに、「A:先行刺激」・「B:行動」・「C:後続刺激」をそれぞれ詳しく分析していただきました。「A:先行刺激」について、子どもの個人差を理解し、特性を分析することで、視覚的情報などを上手く活用して、問題行動を減らすだけでなく望ましい行動を増やしていくうえでも有効活用できると語られました。「B:行動」では、増やしたい・減らしたい行動は何かを明確にする「ターゲット行動」が重要だとおっしゃられ、例として「行儀良くしなさい」などどのような状態が「行儀がいいのか」を曖昧にしたまま指示することは望ましくなく、「5分間椅子に座っていなさい」といったように、行動を細かく分析し、目標を具体的に設定するかが大切であり、子どもの目線に立ち、できない状態・理由を理解をして条件の変更やスモールステップという手法で目標を細かく設定することで、できた場合に都度ほめることで達成感や意欲を身に着けさせることができると教えていただきました。「C:後続刺激」について、褒める・スキンシップを与える時は即座に行うこと、目標に反する行為の際は叱責するのではなく原則無視することで消極的罰を与えること、重要なことは問題行動を起こした時ではなく問題行動以外の時に褒めることで、結果的に問題行動の抑制につなげることだと「応用行動分析」上の重要点をお話しいただきました。

講演の様子3(2022年7月29日)

その他のアプローチの仕方についても解説いただき、より望ましい別の行動へ変換する方法や、問題行動と同時にできないような行動をさせることで抑制する方法、大人側のぶれない態度やしつけの一貫性についての重要性についても解説していただきました。
そして、応用行動分析学は厳しすぎるのではという意見については、行動上の「言語」・「視覚」・「動作」のヒントや援助を最初は十分に与えることが大切であり、徐々に減らしていくことで子どもが自ら行動できるようにしていくこと、指導を強調しすぎないで子どもが楽しみながら達成感を味わうことで「やらされ感」を高めないことなどのポイントを説明していただきました。

最後に、子どもの行動・状態へ注目・分析することで大人も子どもも安心できること、子どもが主役になっているかを常に振り返って考え、子どものちょっとした変化にも反応できるように子どもの一番の味方に身近な大人がなってあげられること、そして大人の「当たり前」は発達の積み重ねで出来ているので経験の少ない子どもは「当たり前」が出来なくて「普通」なのだと理解し、子どもの発達と頑張りを認めてあげることが大切なのだとおっしゃられ、この日のセミナーは終了しました。

参加者の声

  • すばらしいお話でした。失敗ばかりの子育てで反省しました。日本中に広めていただきたいです。ありがとうございました。
  • とても勉強になりました。職場で今日学んだことを還流したいと思います。
  • 保育の場で日々対応の難しい子がいてヒントをいただけました。
  • 子どもを対象としたお話でしたが、大人にも必要な視点のように感じました。
  • ABC理論 具体的に触れられよく理解できました。孫との対応に参考にしたいと思います。