みえアカデミックセミナー2022
近畿大学工業高等専門学校公開セミナー
「水路と町家が残る名張市の旧市街地へ行ってみよう!」の事業報告

開催日
2022年7月26日(火曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時15分まで
講師
近畿大学工業高等専門学校 総合システム工学科都市環境コース(建築系) 准教授 田中 和幸さん
参加人数
72名
受講料
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和4年度は7月14日から8月27日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」(1996年スタート)から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、19年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。
※令和4年度は2セミナーの中止により13セミナーを開催しました。


令和4年度の近畿大学工業高等専門学校公開セミナーは、近畿大学工業高等専門学校 総合システム工学科都市環境コース(建築系)准教授 田中 和幸さんを講師にお迎えしました。

近畿大学工業高等専門学校 総合システム工学科都市環境コース(建築系) 准教授 田中 和幸さん

**************************【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
三重県名張市の旧市街地には水路が張り巡らされ、江戸時代後期から昭和初期にかけて建設された町家が残されています。今回は、現地調査によって判明した町の特徴について都市の観点からご紹介いたします。
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セミナーの様子1(2022年7月26日)

まず、「名張市」がどのような市か地図をもとに簡単な説明からセミナーは始まりました。名張市の代表的な観光名所として、赤目四十八滝などを例に挙げられ、名張市の旧市街地はあまり注目されてこなかったと語られました。そして、旧市街に該当する地区を地図上で示していただき、街道に沿って村ができたこと、伊勢神宮の参拝者の影響など、名張市がどのように形作られ発展してきたのか、また現在の名称に至るまでの変遷ついて説明していただきました。また、旧市街地に流れていた平尾水路と梁瀬水路についても解説していただき、特に梁瀬水路については古い歴史を持つにもかかわらず知名度が低い理由の考察や、旧町の一部では近年イベントを行うなどして水路のPRを一生懸命行っていることを紹介していただきました。

ただ、町の水路巡りをすると一部では管理が行き届いていない箇所も見つかるなど、誰も水路の全容が把握できていないという問題点があり、近畿大学工業高等専門学校の生徒と一緒に研究を行うに至ったこと、調査の結果現在の水路の全長は約13キロもあり、その内をほとんど実態が知られていないこと、明治時代の地租改正時に作られた旧公図に描かれた水路が約5割が残されていることが分かったと教えていただきました。さらに、道路の下に隠された水路や、家の前を流れる一般的に思い浮かべる水路がある一方で、灌漑用として使用されている水路や家と家の間を流れているものや驚くことに家の下を流れていたり、立体交差をしたりしている水路も見つかるなど、梁瀬水路には多様な形態があること、町の拡張に伴い水を公平に分配するための工夫の跡が見られることなど梁瀬水路の特徴を詳しく説明していただきました。
そして、学生が作った水路の活用イメージ動画も披露していただき、水路を活かした街づくりを学生が主体となって考えている様子についても紹介していただきました。

セミナーの様子2(2022年7月26日)

続いて、古い町並みが残る地区が抱える「空き家」問題について解説していただき、旧市街地でも歴史的価値を持つ町並みの保全が難しい現状や初瀬街道沿いの町屋について全容を把握できていない問題に取り組んだ経緯など旧市街地の町屋についての調査についても紹介していただきました。学生たちの調査の結果、旧市街地の歴史的な建物が相当数あるにもかかわらず歩いていても実感がわきにくい理由として、著しく増改築されるなどのため誰もが分かる状態ではない建造物が多いことが理由ではないかと推測されていました。そして、他の町で成功した事例もあるので、修繕すれば十分歴史的価値のある町並みを取り戻すことができるはずだと可能性についても語られました。

セミナーの様子3(2022年7月26日)

また、旧市街地のある住宅を調査した際の結果や通常の建物には見られない不可解な部分が見つかったこと、その理由は江戸時代の地震後の補強の影響や路地(ひゃわい)を室内に取り込んで現在の形になったであろうことが公図や市史と照らし合わせることで読み取れることなど、町屋がどのように建てられどういう変遷を遂げていったのかについて詳しく解説していただきました。
最後に、神社への共同企画の提案やグルメマップの作成など近畿大学工業高等専門学校の学生たちによる名張市の旧市街地を活性化する活動を紹介していただき、この日のセミナーは終了しました。

参加者の声

  • 名張のボランティアガイドですが、さらに詳しく調べて、ガイドに活用したいです。ありがとうございました。
  • 伊賀地方については、あまり知らなかった。特に地域生活の基本となる水路を調べ、今後に活かせられる問題点を洗い出したことは大変良かったと思います。更なる調査をしてほしいものです。期待します。一度名張市に行ってみたいと思います。
  • 名張市にいるが新しい発見が多くあり、楽しかったです。
  • 名張といえば、赤目の滝と、ブドウ狩りで訪れた記憶があります。地震でゆがみ、不思議な改修が行われたことを、設計図を起こすことから読み解いたというお話に思わず「アッパレ」と思いました。旧市街地に興味が持てました。
  • 実家が名張なのですが、今まで知らないことばかりで大変興味深く、又、懐かしいお店や食べ物など、改めて出身地を見直すきっかけになりました。ありがとうございました。今後も若い世代の活躍を期待いたします。