みえアカデミックセミナー2022
三重県立看護大学公開セミナー
「認知症介護を愛と知恵で」の事業報告

開催日
2022年7月20日(水曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時05分まで
講師
三重県立看護大学看護学部看護学科 在宅看護学 教授 六角 僚子さん
参加人数
64名
受講料
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和4年度は7月14日から8月27日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」(1996年スタート)から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、19年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。
※令和4年度は2セミナーの中止により13セミナーを開催しました。


令和4年度の三重県立看護大学公開セミナーは、三重県立看護大学 看護学部看護学科 在宅看護学 教授 六角 僚子さんを講師にお迎えしました。

三重県立看護大学看護学部看護学科 在宅看護学 教授 六角 僚子さん

***************************【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
年々、認知症の方々の介護についてクローズアップされています。まず認知症を病気として知ることが愛ある介護につながると考えます。やさしく楽しい介護を一緒に考えましょう。
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講演の様子1

在宅支援の場
はじめに、講師が立ち上げに協力してから20年近くになるデイサービスセンター「お多福」(茨城県水戸市)での活動を紹介していただきました。「お多福」の近くには保育園があり、世代間交流が行われることで散歩を楽しめたりお風呂に入れるようになったりするなど、デイサービスを利用する認知症の方への影響や子どもたちのケア能力について語られました。
続いて、「物忘れが多いイコール認知症」ではないとされ、「癌」はどこにどんな腫瘍があるかで治療が異なるとおっしゃられ、「認知症」も何の認知症かで治療や薬の種類が異なることや「認知症」における専門医による鑑別診断の重要性・医療連携の必要性について説明していただきました。そして、家族は毎日接していると少しおかしいと思ってもあっという間に月日が過ぎ、発症から受診までの期間が長くなり、結果として認知症が進んでしまうことを、実例を交えて教えていただきました。また、時・場所・人の順番で、顔は分かるけれど関係性が認知できなくなってしまうことや、若年性認知症のケースでは食べ方や歩き方が分からなくなる場合があるなどを解説していただきました。

講演の様子2

認知症とは
認知症について、講師は「認知症は病名ではなく症状を表す言葉である」と語られ、例えば骨が折れた状態を「骨折」というけれど、折れた場所によって前腕骨折なのか大腿骨骨折なのか「診断名」が付くように「認知症」にも「診断名」があるとおっしゃられました。
認知症を起こす疾患は70種類以上はあるとされ、その内、四大疾患と言われる「アルツハイマー型認知症」・「前頭側頭型認知症」・「レビー小体型認知症」・「血管性認知症」についてそれぞれどんな症状が出るのか、対処法はどのようなものがあるかについて詳しく説明していただきました。「アルツハイマー型認知症」では、海馬に症状(萎縮)が出ることで記憶に影響が出ること、「前頭側頭型認知症」は前頭に症状が出ることで、社会的規範(ルール)が認識できなくなり、信号無視や万引きに見える行動をとってしまったり、事件性や死亡率が高くなってしまう危険性があることを説明していただきました。

また、そのような症状を持つ人を地域で支えるためにどのようなことが可能なのかを実例を交えて解説していただきました。側頭葉が委縮した場合には、言葉が分からなくなることで相手の言っていることが分からなくなり、コミュニケーションが取れなくなってしまうとおっしゃられました。「レビー小体型認知症」については、後頭部に委縮がおこることで歩行困難や幻覚・幻聴が起きやすいと解説していただき、「血管性認知症」はできるときとできないときが混在するなどいわゆる「まだら認知症」と言われる状態になり、高血圧や糖尿病により誘発されやすいので薬をきっちり飲まなければならないという注意点も教えていただきました。さらに、治る「認知症」についても紹介していただきました。

講演の様子3

認知症の症状
主症状と随伴症状があり、その内「もの忘れ」・「見当識障害」・「失認」・「失行」について詳しく説明していただきました。「もの忘れ」については、声をかける際は相手が忘れている前提で声をかけてほしい、「自分のことを覚えていますか?」とは言わないでほしいとおっしゃられました。自己紹介から始めるだけでコミュニケーションが取れるようになれるとコツを教えていただきました。「見当識障害」については、時・場所・人の順番で進行していき「人」までいくと重度になってしまうことや、「時」を結び付けて会話をする習慣をつけると良いとアドバイスされていました。「失認」について、目の前にあるものや聞いたものがなんであるかわからなくなった人に対しては、体で覚えた記憶は再生可能であることを理解して行動のモデルケースを示すことが大切だと相手と接するための工夫を教えていただきました。「失行」も一連の流れを一つ一つ確認しながらであればできるようになるとされ、認知症イコール何も出来ないと決めつけるのではなく、認知症の方を理解し、配慮をすることの必要性について語られました。

認知症の人の家族
家族は今共に認知症の方と暮らしていることを周りが認め、「家族は頑張っている」と言葉にして理解していることを示すことが大切だとおっしゃられました。

認知症の予防
認知症になる時期をできるだけ遅らせるためには認知症を理解することが重要だと語られました。認知症の始まりの時の変化について紹介していただき、半年前から目立つようになってきたら受診のタイミングだとされ、早期発見は治療可能な原因を見つけることにつながるのだと説明していただきました。

最後に、ある認知症の老婦人が病院で亡くなった際に見つかった遺書から、認知症の方がどのように感じているのかということをを紹介され、ひとりひとりが地域の認知症の方や認知症の予防に協力してもらえるようになれば嬉しいと語られこの日のセミナーは終了しました。

参加者の声

  • 認知症に対する心配・不安が少し無くなったように思いました。認知症の人の気持ちもわかって、胸がつまされました。
  • 貴重なお話ありがとうございました。お話の上手な講師の先生に驚きました。本当にありがとうございました。
  • 認知症について具体的に説明され、よく理解できました。私も80才、認知症にならないよう努力はしていますが、受診のタイミングもよく承知しました。
  • 認知症の実態の一部を知ることができ、対応の困難さが理解することができました。ありがとうございました。
  • ひじょうに参考になりました。認知症の人、付き添う人、家族は大変です。頑張りましょう。