講座ボランティア企画【第81回名盤を聴く~戦前戦後を生き抜いた気骨ある美しきピアニスト~原 智恵子 特集】の事業報告

幼い時から才能に恵まれた智恵子は9歳で上京、フランスの名ピアニスト・ジル・マルシェックスにも見いだされ、13歳で渡仏し、17歳でパリ音楽院を主席で卒業、22歳で参加の「第3回ショパン国際ピアノ・コンクール」ではすばらしい演奏を披露したにも関わらず、何の賞にも輝かなかった審査結果に聴衆の暴動が起こり、警察隊が出動、特例として
後日、「聴衆賞」が贈られたそうです。講師の解説によると、長い歴史の中で、後に賞が与えられたのは、この第3回のみとのこと。その1937年の演奏『スケルツォ 第2番 変ロ長調op.31』(ショパン)をこの日の第1曲目として聴きました。

演奏家としては輝かしいキャリアをスタートさせた智恵子ですが、私生活では恵まれず、当時の日本では大きなバッシングを受けたこともあったと言います。現在でも全国に多くの店舗がある老舗イタリアンレストランの創業者と1938年、23歳の時に結婚しますが、その後、離婚。38歳の時にパリで出会ったチェロ奏者、ガスパール・カサドと「デュオ・カサド」としても活動し、44歳で再婚。ベートーヴェン『魔笛の主題による7つの変奏曲』では練習量が感じられる情熱的な演奏を聴くことができました。また、1962年、47歳の秋には初の日本公演、三重県文化会館(現在の津警察署あたりにあったそうです)からスタートしたと記録が残っているそうです。(会場にご覧になった方はいませんでした。)
また、1976年に発売された有名音楽評論家の書籍の中で「子どもの頃から30年近く経とうとするのにテクニックの質が大して変わっていない」となぜか評されている事実が紹介され、功績の割に残念ながら評価は高くないが、このような素晴らしいピアニストがいたことを知ってほしいと締めくくり、この日の講座は終了しました。

【プログラム】
1.ショパン:スケルツォ 第2番 変ロ長調 Op.31
(1937年 パリ)
2.シューマン:「子供の情景」 Op.15
(1953年12月4日 パリ)
3.ボッケリーニ:チェロ・ソナタ 第6番から
(チェロ:ガスパール・カサド)(1962年)
4.ベートーヴェン:魔笛の主題による7つの変奏曲 WoO.46
(チェロ:ガスパール・カサド)
(1961年 シャルトル音楽祭)
5.ラヴェル: ハバネラ形式の小品
6.カサド: 愛のことば
(チェロ:ガスパール・カサド)
(1963年 旧ソ連)
――――― 休 憩 ――――――
7.ショパン: ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11
指揮:渡邊 暁男/日本フィルハーモニー交響楽団
(ピアノ:プレイエル フルコンサート/フランス)
(1962年12月4日 東京、世田谷区民会館)
- ピアニスト原智恵子、初めて知りました。力強さと迫力と、それでとてもやわらかなすばらしい演奏でした。
- 原智恵子さんが亡くなった時にテレビで知り、どんな演奏家だったのか興味がありました。今日は参加して、勉強になりました。当時のピアノの音色も興味深かったです。シューマンではペダルの音もリアルに聞こえてきて、ペダルも上手だなと思いました。
- 初めての参加です。原智恵子の名にひかれて参加しました。川添象郎氏がどんなルーツをもっていたのか知りたかったのです。年表と曲、解説がわかりやすくいい時間でした。