みえアカデミックセミナー2021
鈴鹿医療科学大学公開セミナー
「入浴について知ろう ―安全な入浴方法と効果―」
の事業報告

開催日
2021年8月19日(木曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時00分まで
講師
鈴鹿医療科学大学 保健衛生学部(リハビリテーション学科) 准教授 島崎 博也 さん
参加人数
63名
参加費
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和3年度は7月16日から8月25日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、18年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。



令和3年度の鈴鹿医療科学大学公開セミナーは、保健衛生学部(リハビリテーション学科) 准教授 島崎 博也 さんを講師にお迎えしました。

鈴鹿医療科学大学 保健衛生学部(リハビリテーション学科)
准教授 島崎 博也 さん

*************************

  • 【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
    入浴は、現在の生活において必要不可欠であり、清潔の保持、身体を温める、疲れを癒しリラックス感を得るといった目的でされている方も多いのではないでしょうか?
    今回、安全な入浴方法や効果などを知り、より有意義な入浴をおこなえるようにお話しいたします。

*************************

講師の島崎さんの専門である「作業療法」について説明していただき、三重県にある温泉療法を取り入れている病院やその研究活動について紹介していただきました。
  • 入浴の目的について
    はじめに、講師の島崎さんから受講者の皆さんに対して入浴する目的や理由を考えてみましょうと伝えられ、自分なりの理由や考えを書き出してみる時間がありました。
    そして、高齢者の入浴習慣について研究を行ったあるデータをもとに、目的の1位となるのは「清潔にするため」であり、2位は「疲労回復」、3位「汗を流す」といった理由が多かったことを紹介していただき、生活において入浴は必要不可欠なものであるという認識があることを解説していただきました。
お風呂でも、全身が約3cm縮むほどの水圧がかかることや重力が緩和されることで筋肉がリラックスする効能があることを教えていただきました。
  • 入浴の効果
    入浴するとどうなるのかについて、受講生の皆さんが各自で考えてみる時間が設けられました。そして、講師の島崎さんからは、入浴の身体的影響として「温熱作用」・「静水圧の作用」・「浮力の作用」という3つのポイントがあると教えていただき、それぞれの効果について解説していただきました。
    ・温熱作用:体が温まる、コリがほぐれる、疲れが取れる
    ・静水圧の作用:血液循環の促進、心肺機能が高まる
    ・浮力の作用:リラックス作用、体重の1/9の負荷、筋肉・関節の緊張緩和

他にも入浴の効果として、「循環の改善」、「美容の効果」があると語られ、どのように作用するのかについて説明していただきました。
・循環の改善:入浴により、血管が拡張し、血液循環量の増大に伴い心拍出量の増大がおこることで、血圧が低下し老廃物排泄促進に繋がる。
・美容効果:入浴により、代謝の向上(デトックス効果)や古い角質が除去され肌が滑らかになり、保温効果もあることからアンチエイジングが期待される。

  • 入浴における注意点
    高齢者の入浴を若年者との比較を行ったデータをもとに、入浴時における若い世代との違いや血圧変動、脈拍、発汗の注意点について説明していただきました。
    ■高齢者と若年者の違い
    高齢者は血管の伸展性が低下するため、入浴直後には血圧が急激に上昇し、入浴後は徐々に血圧が降下するという特徴があるとして、お風呂に入ってすぐは静水圧がかかり血管が縮むためであると理由を解説していただきました。このことから、血圧の変動が大きく、入浴中や入浴後のめまいやふらつきの原因になるため注意が必要であるとおっしゃいました。
    また、高齢者は入浴直後から入浴後まで心拍増加が少なく、若年層と比較すると入浴中の発汗量は1/3以下であるとデータで示され、このことから高齢者は体温調整機能が低下しており、自覚症状が小さいにもかかわらず、高体温・高血圧(のぼせ・ふらつき)の原因になりやすいため一気に入浴しないように気をつけることが重要だと説明していただきました。
    ■湯温による違い
    若年層は入浴直後は心地よいと感じるものの5分も経つと熱いと感じるようになり、15分経つと不快に感じるようになるというデータを紹介していただき、一方で高齢者は入浴中ずっと温かく快適である感じたまま、入浴直後から感じ方に変化が特にみられないという傾向があることを教えていただきました。そして、自律神経にも湯温が影響すると説明していただきました。
    ・42℃のお湯:心臓・発汗を促進し、胃腸の働きを抑制、血圧を上昇させ、筋肉の収縮や身体を興奮させる、「交感神経」を刺激する。
    ・38℃から40℃のお湯:心臓・発汗を抑制し、胃腸の働き促進、血圧を下降させ、筋肉の弛緩や身体をリラックスさせる、「副交感神経」を刺激する。
    42℃の熱いお湯は、例えば朝目覚める時には効果があることや、40℃くらいのお湯は高齢者にとってはぬるく感じてしまうかもしれないが、加齢に伴い感じ方に変化がおこっていることを認識し、温度は嘘をつかないので信用して入浴してほしいとおっしゃいました。
    ■入浴前後の血圧変動/高齢者の入浴習慣/入浴事故について
    湯温が高いほど血圧が急激に上昇し、急に出浴した場合には血圧が急激に下がることから、脱衣室との気温差が大きい際にも注意が必要であると語られました。また、高齢者は夏に比べて冬季の方が、湯温も入浴時間も高くなるため入浴における注意点を特に意識しておく必要があると説明していただきました。さらに、浴槽内での溺死・死亡者数は高齢者に多いという傾向があり、特に寒い日に多く、交通事故死よりも死者数が多いという意外な事実を教えていただきました。

  • 安心・安全な入浴のために
    高齢者特性から考える入浴のポイントとして、「お湯の温度・時間」、「全身浴での入り方」、「浴室と外気温の差」について解説していただきました。
    ・お湯の温度・時間:40℃の長すぎない入浴で心臓の負荷を少なくする。
    ・全身浴での入り方:全身浴は静水圧の影響を受けるため、心肺機能への負担が少ない半身浴も検討する。
    ・浴室と外気温の差:脱衣室を温めたり、気温の高い時間での入浴をこころがけたりしてできるだけ温度差が少ないよう配慮し、入浴事故のリスクを減らす。

    最後に、日本温泉気候物理医学会が提唱する「安全な入浴7ヶ条」を紹介していただき、高齢者は身体が温まりにくく、体温調節機能の反応が低下することに伴い、熱さに対して鈍感になり、身体に負担がかかっていても温かく快適であると認識してしまう傾向にあるため、安全な入浴方法を知って、入浴効果を高め心身の健康に役立ててほしいと語られました。

参加者の声

  • 年を取ってきたので入浴の時色々と気を付けなければいけないと思った。特に冬場の入浴は一人住まいなので、特に気を付けようと思った。
  • 年齢を重ねるにつれ、よく耳にする高齢者のお風呂での事故を今迄の自分にあてはめ注意していく。大変わかりやすい講義でした。
  • 快適ではあるが、気をつけないと危険が隣り合わせということが、よくわかりました。
  • 高齢者は心拍変化が少なくてそれ故環境に対する適応力が少ないから注意が必要。浴槽入浴のメリットがいろいろあることに気付いた。