みえアカデミックセミナー2021
高田短期大学公開セミナー
「災害は忘れたころにやってくる どうする、その時」
の事業報告

開催日
2021年8月22日(日曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時15分まで
講師
高田短期大学 キャリア育成学科 介護福祉コース 特任准教授 福田 洋子 さん
参加人数
57名
参加費
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和3年度は7月16日から8月25日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、18年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。



令和3年度の高田短期大学公開セミナーは、キャリア育成学科 介護福祉コース 特任准教授 福田 洋子 さんを講師にお迎えしました。

高田短期大学 キャリア育成学科 介護福祉コース
特任准教授 福田 洋子 さん

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  • 【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
    世界中で繰り返される災害の被害。我が国では南海トラフ地震の危険がクロースアップされています。メディアも大きく取り上げ、注意喚起を促していますが、いつ起こるか分からない災害に対して、どうしても意識が向かない面はあると思います。今回は、いざという時のために、どうするか、自らをどう意識づけるかを探ります。

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昔から言われる怖いものの4番目にあたる「おやじ」は現代なら「オレオレ詐欺(子ども)」になるかもと講師の福田さんがお話しされると、会場で納得されるように頷かれている方もみえました。

はじめに、この世で怖いものといえば、昔は「1.地震、2.雷、3.火事、4.おやじ」といったが、今は「1.地震」なら津波や原発が、「2.雷」なら竜巻が、「3.火事」なら突風がセットで怖いものになると語られ、さらに3つめの怖いものに火事だけでなく「豪雨と土砂崩れ」や「巨大台風」が入るなど恐れる災害の種類が増えているとおっしゃいました。

  • 地震のメカニズム/プレートの沈み込み/断層
    海洋プレートの動きに大陸プレートが引きずり込まれ、ひずみが蓄積し、限界に達した大陸プレートがはね上がることで地震が発生するというメカニズムやプレートの沈み込みによって「活断層地震(横ずれ・縦ずれ)」と「プレート境界地震」が起こること、力の向きによって「正断層」・「横ずれ断層」・「逆断層」・「衝上断層」という異なる断層面を持つ断層の種類があることを教えていただきました。
避難所生活での衛生管理上の課題としては、「水」と「ふき取り用のウェットティッシュ」の確保をあげられました。
  • 津波の伝わる速度/押し波と引き波
    また、津波の速さについても乗り物を例に、水深30mなら国道を走る自動車(時速60km)くらい、水深4000mならジェット機(時速700km)並みになるなど、水深の深さと津波の速さの関係を分かりやすく説明していただきました。そして、津波の「押し波」と「引き波」について、「押し波」は平野部では進む速度があまり下がらずに内陸深くまで侵入すること、「引き波」は水自体の配力は押し波よりも大きく建物が倒されやすいことなど特徴を解説していただきました。
  • 日本の活断層
    日本における活断層と原発の立地の問題や過去のM6.1以上の地震と活断層の関係、1995年M7.3だった阪神淡路大震災と2011年M7.9だった東日本大震災の災害範囲とを比較し、いかに東日本大震災では広範囲で震度4以上の地震が起こっていたのかを確認しました。
  • 南海トラフ地震
    三重県での重要度も高い南海トラフ地震について、南海トラフの場所や起こった場合の震度分布について改めて図をもとに解説していただきました。また、南海トラフ地震が起こった場合、「超大型地震」と「巨大地震」があることや、十数メートルの津波は20%だが、5メートル以上の津波が起こる確率は60%にもなることなどを、500年に5回の津波が起こった南海トラフ地震の歴史を振り返りつつ説明していただきました。
    そして、南海トラフ地震は約100年の周期で発生すること、同時か数年内に広範囲で連動して起こると考えられること、南海トラフ地震の記録はしっかりしているため南北朝時代以降の観察において150年の間に起きなかったことは一度もないという説を紹介していただき、災害予測と予防の覚悟が必要だとおっしゃいました。
  • 最近の災害と災害対策基本法
    1959年に起こった伊勢湾台風や1961年に制定された災害対策基本法以降の近年の災害と対策のための法整備について振り返りました。2021年には個別の避難計画の作成を市町村の努力義務化とした法改正が行われたことにも触れられ、災害対策がよりきめ細やかに行われることが必須となったことを紹介していただきました。
  • 避難
    地震による地割れ崩落と土砂崩れ、大雨による土砂崩れ、大雨による道路の冠水・陥没など実際の災害現場の映像から起こりうる災害を考え、避難の際に心掛けることについて教えていただきました。
    ■居住者が持つべき避難に対する基本姿勢
    「行政からの対策には限界があることをしっかりと認識する」、「自らの命は自ら守るという意識を持つ」、「自動車による避難は避ける」、「エコノミークラス症候群の予防」、「避難行動をとるタイミング」、「避難情報・防災気象情報・水位情報・リアルタイム情報などを確認する」「立ち退き避難の必要性の有無」「平時より避難経路の安全性を確認しておく(側溝や蓋が外れたマンホール等の落下、小規模な土砂災害の可能性)」、「日が明るいうち、暴風が吹き始める前に避難を完了する」、「空振りになっても、幸運だったという心構えをする」という避難時のポイントを紹介していただきました。
    また、災害弱者(要配慮者)への配慮も大切だと語られ、災害弱者とは病人や高齢者、妊産婦、障がい者など災害時に自力での避難が難しく非難行動に支援を要する人を指し、特に早めの避難が必要だと説明していただきました。
    ■インターネット検索
    便利な道具は積極的に活用すべきだとして、インターネットを介した防災対策について紹介していただきました。アプリやショートメッセージサービスによる「逃げなきゃコール」による避難支援方法や、ハザードマップと合わせて確認することで、自宅など身近な場所からの避難行動や適切な避難先を判断できる「避難行動判定フロー」、洪水・土砂災害・津波についてまとめて地図上で確認する場合には国土交通省の「重ねるハザードマップ」が便利など、たくさんの情報を紹介していただきました。また、「避難行動判定フロー」が内閣府防災の公式LINEアカウントから確認することができることや、「災害時に便利なアプリとWEB(多言語)」という内閣府防災情報のホームページからダウンロードできるリーフレットについても教えていただきました。
    ■ハザードマップとは
    自然災害による被害とその範囲を予測した地図、または予測される災害の発生地点、被害の範囲や程度、避難経路や避難場所などの重要な情報が地図上に示されたものが「ハザードマップ」であると説明していただきました。「ハザードマップ」には洪水・内水面・高潮・津波・土砂災害・火山・地震防災危険・液状化などの種類があり、それぞれの特性について教えていただきました。ハザードマップの見方や避難情報のポイントは「避難行動判定フロー」に詳しく書いてあるため参考にしてほしいとおっしゃいました。また、確認したいハザードマップとして「国土交通省ハザードマップ」・「三重県ハザードマップ」・「津市ハザードマップ」を紹介していただきました。講演の中では、県内の津波浸水予測図(ハザードマップ)を例に、自分の家がどこにあるか確認し、自宅がある場所区域に入っているかどうかを確認するハザードマップの使用方法を教えていただきました。そして、「ハザードマップ」の有用性を語っていただいたうえで、「ハザードマップ」は過去のデータに基づいて作成されており、今後来る災害の範囲を示しているわけではないため、「ハザードマップ」を信じすぎないことも大切だとおっしゃいました。
    ■避難勧告等に対する住民の実態/■東日本大震災時の避難状況調査結果
    2010年広島県の豪雨災害後に実施した住民向けアンケートで、避難準備情報・勧告・指示の違いを認識していない住民が4割以上に上ったことや、東日本大震災後の内閣府等の調査で津波・避難情報を見聞きした人は全体の約51%、すぐに避難した人は全体平均で約57%であったことから、情報を正しく認識している人が想定よりも少なかったという実態を教えていただきました。なぜ、人はすぐに避難しないのかということについては、「正常バイアス」と「多数派同調バイアス」が働くからだと説明していただきました。周りの人が逃げないことで自分も同調して逃げ遅れてしまったり、状況を自分が安心できるように無意識に考えた結果、避難が後れてしまったりするなど、先入観や思い込みにつながるこうした考え方は非常に危険だとおっしゃいました。こうした「正常バイアス」や「多数派同調バイアス」を防ぐために、たとえば川の氾濫に巻き込まれないよう橋を渡らない避難ルートを考えたり、黙って逃げるだけでは周りは正常バイアスが働きをほとんど逃げないため、周りの人も動くように「逃げろ」と声を出しながら避難することを心掛けたりするなど、一人ひとりが逃げるための心得を持ち、もう大丈夫と考えるのではなく、その時々で「最善の行動をとること」が重要だと説明していただきました。

  • 長期になるかもしれない避難所生活
    避難所閉鎖まで東日本大震災で9か月、熊本地震では7か月かかったことから、避難所生活が長期化することを想定しておく必要性を説かれました。阪神淡路大震災・東日本大震災・熊本大地震での主な災害関連死を確認し災害時に危険が増加する感染症や避難生活時に問題となる感染症について考えました。衛生面ではトイレ対策が重要になると語られ、断水時のトイレの作り方やおむつの利用、簡易トイレ作成時には吸水力のあるもの(新聞紙・猫砂・布・おむつなど)を入れると良いということや市販の簡易トイレについても紹介していただきました。
    また、歯磨きも肺炎予防には大切だと話され、避難所生活では水が十分に使用できない可能性があることから、ウェットティッシュと指を使って口の中の衛生環境を整える方法を教えていただきました。感染対策としてはテントの活用など隔離の工夫が求められるとおっしゃいました。
    車中泊が原因でのエコノミー症候群(静脈血栓症)も問題だとして、エコノミー症候群は3日間の車中泊で発症してしまうため、予防法として体を定期的に動かすことや、避難所での段ボールベットを活用することを講師の福田さんは特に勧められました。
    最後に、災害はいつ起こるか分からないため、ハザードマップを活用し災害予測をしたり、逃げる場所と逃げ方の練習をしたり、備蓄品を準備し、避難所でどう生き延びるかを考え、感染予防とエコノミー症候群予防方法を理解して災害関連死を防ぎ、自分で自分を守るとともに知らない人に知っていることを教えてあげることが大切だとおっしゃいました。

参加者の声

  • 災害対応についてこんなに詳しく勉強したのは始めてでした。本当に参考になりました。早速不足分、対応したいと思います。ありがとうございました。
  • 資料を準備いただいたので家にて内容を家族に伝えて話題にすることで防災意識を家族全体で共有できありがたいです。(内容が判りやすく実践的現場感覚に基づいていた)
  • 大変良くわかりました。準備の大切さを頭に入れ、その時に備えたいと思います。
  • 平時から心掛けておくべき事、本日の講座を通じ、今一度気を引きしめて対策に取り組みたいと思いました。