みえアカデミックセミナー2021
鈴鹿大学短期大学部公開セミナー
「健康寿命を延ばすための食事術」の事業報告

開催日
2021年8月3日(火曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時00分まで
講師
鈴鹿大学短期大学部 生活コミュニケーション学科 食物栄養学専攻 教授 梅原 頼子さん
参加人数
72名
参加費
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和3年度は7月16日から8月25日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、18年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。



令和3年度の鈴鹿大学短期大学部公開セミナーは、生活コミュニケーション学科 食物栄養学専攻 教授 梅原 頼子 さんを講師にお迎えしました。

鈴鹿大学短期大学部 生活コミュニケーション学科 食物栄養学専攻
教授 梅原 頼子 さん

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  • 【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
    人生90年時代は目前となっている一方で、介護の必要がなく生活できる期間である健康寿命と平均寿命の差が男性は約9年、女性は約12年あります。つまり人生終盤の約10年は日常生活に何らかの制限があるということです。一生涯を健康に過ごすために食は大切です。健康寿命を延ばすための食事について考えましょう。

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BMI簡単チェック表や計算式を使用して、受講者の皆さんもBMIから自分の栄養状態を確認しました。
  • 日本人の栄養課題
    日本人の栄養課題としては、肥満や生活習慣病とその予備軍など栄養過剰が懸念されている人と、やせ・拒食・低栄養など栄養不足が心配される人の両方が混在している状態を指す「栄養不良の二重負荷」があげられると説明をいただき、ひとりの人生の中でも年齢によって過栄養から低栄養の状態へと栄養課題が変化していくことも「栄養不良の二重負荷」と呼ばれているのだと教えていただきました。
    ■栄養状態の診断 BMI
    過栄養と低栄養などの栄養状態を確認するのは、BMI(体格指数)を用いると説明をいただきました。そして、BMIの算出方法や年代別の目標とすべき数値、BMIと目標数値を比較することで低栄養か過栄養なのかが分かることを解説いただきました。
    ■健康と栄養状態(BMI)
    BMIと死亡率を比較したデータをもとに、男女差はあるものの、低栄養によるやせは肥満と同じくらい健康上の問題となることを説明いただきました。
平均寿命に対する認識は概ね皆さん共通でしたが、健康寿命に対しては意外とバラバラな認識でした。
  • 平均寿命と健康寿命
    ■平均寿命
    平均寿命とは0歳の人の寿命のことであり、2020年における日本人の男性の平均寿命は81.6歳、女性87.7歳という世界トップクラスであることや、現在60歳の平均余命は男性23.97歳、女性29.17歳になることを教えていただきました。
    ■健康寿命
    日常生活が制限されることなく行動できる期間である「健康寿命」は男性72.6歳、女性が75.5歳となること、平均寿命と健康寿命の差は約10年もあることを説明していただきました。

■平均寿命より健康寿命は短い
健康寿命と平均寿命の差からは人生終盤の10年は何らかの支援が必要な状態となる可能性が高いことが分かると語られました。
■介護が必要になった原因
要介護になった原因を調査したデータをもとに、高齢による衰弱(フレイル)が全体の3分の1を占めていることを確認し、フレイル予防が健康寿命の延伸につながることを解説いただきました。

  • フレイルの概念
    フレイルとは日本老年医学会が提唱した「老い」の新しい概念のことであり、以下の特徴について詳しく説明をしていただきました。
    ・加齢に伴い、身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態のこと
    ・不自由のない健康な状態と生活に人の手や器具の助けが必要な要介護状態の中間の状態
    ・何らかの対策を行えば元の健康な状態に戻る可能性がある
    ・「身体」、「こころ/認知」、「社会生活」の虚弱が存在し、多面的な要因を持つ
    ■フレイルサイクル
    フレイルは栄養問題と密接にかかわっていると語られ、食事の摂取量が落ちると低栄養に陥り、そこから体重減少や筋肉量の低下によってサルコペニア(筋肉量が減少し、筋肉や身体機能が低下している状態)に至り、そのことが原因で食欲低下につながっていくという悪循環のフレイルサイクルを引き起こすことになると説明いただきました。そのため、フレイル予防には低栄養とサルコペニアを予防することが重要であると解説していただきました。
    ■フレイル健診
    2020年4月から後期高齢者(75歳以上)を対象にフレイル検診が始まったことや、その意義について説明をしていただきました。また、健診で行われる10類型15項目の質問(1.健康状態、2.心の健康状態、3.食習慣、4.口腔機能、5.体重変化、6.運動・転倒、7.認知機能、8.喫煙、9.社会参加、10.ソーシャルサポート)についても紹介していただきました。
    ■フレイルチェック
    簡単にフレイルチェックを行える方法を講演内で教えていただきました。
    1.体重減少、2. 疲れやすくなった、3.日常生活活動量が減少した、4.身体能力(歩行速度)が低下した、5.筋肉(握力)が低下したという5項目のうち3項目以上あるとフレイルの可能性が高く、受講生の皆さんも真剣に自分の状態を考えていました。講師の梅原さんからは、特に体重について意図せずに1年間で4から5㎏減少したら注意が必要であり、定期的に体重を量ることの重要性や、横断歩道が渡り切れない、2リットルのペットボトルが持てないなど日常生活に支障がある体力の低下は早期にフレイルの状況や可能性を把握できるため、普段から気を付けておくと良いとアドバイスをされていました。そして、早い時期に気づいた上で改善すれば、フレイルの状態から健常な状態に戻すことが可能であると説明をしていただきました。
    ■サルコペニアチェック
    指輪っかテストというサルコペニアを簡単に確認できる方法を紹介していただき、実際に受講者の皆さんがチェックしてみる時間がありました。

  • フレイル予防の食事
    フレイル予防の3つのポイントとして「栄養」・「運動」・「社会活動」をあげられ、この3つは密接にかかわっていること、どれか一つを重視すればいいというわけではなく、バランス良く日常生活に取り入れることが大切であるとおっしゃいました。そして、フレイルを予防する食事の注意点として、特定の食品や栄養素に効果があるというわけではなく、食べ方や複数の食品の組み合わせが影響すると説明していただきました。
    ・3食しっかり食べる:
    生活リズムを整えることにつながると解説いただきました。
    ・1日2回以上主食(炭水化物)・主菜(たんぱく質)・副菜(ビタミン)を組み合わせて食べる:
    エネルギー源、身体を作る、身体を整えるというそれぞれの作用や、卵かけごはんのみ、うどんだけなどやってしまいがちな食事の改善点などを説明していただきました。
    ・いろいろな食品を食べる:
    食品摂取多様性チェックをご紹介いただき、受講生の皆さんも実際にチェックしてみながら普段の食事の内容について考えていきました。多様性得点が高いほど、食事の満足度も上がり、フレイルのリスクも低くなることを解説していただきました。
    ・筋肉を増やすために主菜をしっかり食べる:
    たんぱく質を一日70g以上食べている人はフレイルになりにくいという研究データを紹介していただきました。
    ■主菜は毎食しっかり食べる
    日本人は夕食にたんぱく質を摂りがちであるが、たんぱく質の合成は3食で均等に摂った場合に比べて25%も低くなってしまい、効率が悪いとおっしゃいました。たんぱく質を毎食25から30g程度に均等に摂ること、特に日本人は朝食にたんぱく質の摂取が少ないためしっかりメニューを考える重要性を具体的な朝食の内容を例に説明していただきました。朝食にたんぱく質を摂取する重要性について、たんぱく質は合成と分解を繰り返し、睡眠中はたんぱく質を摂らない時間が長くなるため、朝食にしっかりたんぱく質を摂取することは筋肉量を増やし、活動的になれるのだと解説していただきました。
    ■たんぱく質摂取チェック
    食品のたんぱく質含有量を紹介していただき、当日の朝食を思い出していただきながら受講生の皆さんには、たんぱく質量の計算に挑戦していただきました。

    最後に、高齢期には上手に食事をギアチェンジし、過栄養・メタボ予防などの食事の考え方から65歳以上からは徐々に低栄養・フレイル予防になる食事方法に切り替えて健康寿命を延ばしてほしいと講師の梅原さんは語られました。

 

参加者の声

  • フレイル予防の為今後4つの事を守るよう心掛けて食事をするように行いたいと思いました。非常に参考になりました。ありがとうございました。
  • 平均寿命のお話しの中で余命の数字を自分自身の実年齢にあてはめてみて、ちょっとドキッとするものがありました。たんぱく質をしっかり取る食生活を心がけたいと思いました。
  • 大変勉強になりました。今後の運動、食事の参考とさせていただきます。ありがとうございました。
  • 実際的でよくわかった。(具体的だった)自分の生活を振り返ることができてこれからに生かせそうで、聞かせてもらってよかった。