みえアカデミックセミナー2021
四日市看護医療大学公開セミナー
「生活習慣病の予防」の事業報告

開催日
2021年7月31日(土曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時00分まで
講師
四日市看護医療大学 看護学科 准教授 工藤 安史 さん
参加人数
66名
参加費
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和3年度は7月16日から8月25日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、18年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。



令和3年度の四日市看護医療大学公開セミナーは、看護学科 准教授 工藤 安史 さんを講師にお迎えしました。

四日市看護医療大学 看護学科 准教授 工藤 安史 さん

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  • 【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
    死因の生活習慣病の占める割合など生活習慣病に関連する様々なデータについて紹介します。
    その後、我が国の「健康日本21(第2次)」と題する国民健康づくり運動についても解説します。生活習慣を見直すことは、健康寿命を延ばし、質の高い人生を送るために必要ですので、参加者が生活習慣病とその予防方法について考える機会を提供したく思います。

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出生率のデータは「出生数/人口×1,000」という公式となるため「人口1000人あたり」もしくは「人口1000人対」という表現となります。

  • 統計資料の見方
    はじめに、保健統計資料では何故「人口10万人あたり」という表現がよく使用されるのかという点についてお話しいただきました。例として、ある死亡率のデータを出すために、人口100人の場合と1000人の場合で計算した数字と、10万人で計算した場合の数字で比較を行い、特にがんなどの死亡率ではデータ上の数字の見やすさを優先して「人口10万人あたり」または「人口10万対」という表現をすることが多いのだと解説いただきました。ただし、すべての統計データが人口10万人を用いているわけではないため、統計データを見る際には単位を確認する必要があることも説明していただきました。
健康日本21(第2次)の中で使用されているNDCとは、日本語で日感染症性疾患と言い、生活習慣病の改善できる予防が可能な疾患の総称となります。
  • 生活習慣病と死因
    「主要死因別にみた死亡率の推移」・「性別にみた死因順位別死亡数・死亡率」・「部位別に見た悪性新生物のデータ」・「主要死因別にみた年齢調整死亡率」の4種類の統計データをもとに、数字を見ることで生活習慣病に力を入れなければならない理由や、国の生活習慣病に関する対策が強化された結果についても客観的にとらえることができるようになると解説していただきました。そして、生活習慣病は普段の生活が原因となるため、対策を講じてもすぐに目に見える効果は出にくいが、統計データで確認していくことで、どういう結果が出ているかが分かるのだと語られました。
  • 生活習慣病の患者数
    生活習慣病の定義は広く、肥満による病気を指す言葉だと考えている人も多いかもしれないが、虫歯も実は生活習慣病の範囲に含まれるなど、特定の範囲を定めることが難しい病気だと説明していただきました。その上で、知名度の高い生活習慣病紹介していただき、いかに多くの患者がいるかということを教えていただきました。
  • 生活習慣病の医療費
    生活習慣病と医療費の関係について、多くの医療費が生活習慣病による疾患の治療に使用されている実態を説明していただき、生活習慣病の予防が医療費抑制のためにも重要であることを教えていただきました。
  • 健康日本21(※注)
    一人ひとりの自主的な生活習慣の改善を促す国民健康づくり運動として2000年からはじまった「健康日本21」と、2013年度からスタートした「健康日本21(第2次)」ついて、それぞれの項目の特徴や制定された時代背景、方向性について説明をいただきました。そして、「健康日本21(第2次)」の中から、いくつかの項目について細かく解説をしていただきました。

    ■健康寿命の延伸
    適切な生活習慣病の予防は健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)を延ばすことにつながり、すなわち人生の質を高めることにつながると講師の工藤さんは語られました。しかしながら、平均寿命と健康寿命の差が男女共に大きいので、いかにその差を縮めるのかが今後重要であると解説をしていただきました。
    ■糖尿病
    糖尿病は三大合併症をひきおこすため放置すると非常に危険な病気であるとお話いただいた上で、治療を受けている人よりも潜在的な糖尿病患者が多いことや、年齢が上がるほど糖尿病の可能性も上がることを説明していただきました。糖尿病の予防として、自分自身で健康を学ぶ・考える、かかりつけ医を見つけるという2点に気を付けてほしいと語られました。
    ■慢性閉塞性肺疾患
    慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称のことであり、「健康日本21」では認知度の向上が項目で示されているものの、なかなか認知度が上がらない現状について説明していただきました。
    ■こころの問題と自殺
    自殺に関する統計データをもとに、経済状況などの影響を受けやすいことを数値から読み解いていきました。そして、新型コロナウィルス感染症による経済の悪化が原因での自殺の増大が懸念されている現状についてもお話しいただきました。その上で、自殺の危険を抱えた人に気づき適切にかかわる「ゲートキーパー」の重要性について説明をしていただき、ひとりでも多くの人がゲートキーパーとしての意識を持って、できることから行動に移していくことが自殺対策につながるのだと語られました。
    ■ロコモティブシンドローム
    要介護状態となる大きな原因となることから近年注目されており、予防が重要になることを説明いただきました。
    ■運動と身体活動は異なる概念
    身体活動とは生活活動と運動の2つのことをさし、身体活動と運動は、イコールではないと述べられました。誰もが忙しい現代において運動を行う時間の確保が難しいことから、生活活動で体を動かすことを意識することで身体活動を高め、健康に繋げられると説明がありました。
    ■純アルコール量とは
    アルコールの摂取量については、アルコール度数と純アルコール量の関係についてお話をいただき、節度あるアルコール量は年齢が上がると少ない方が望ましいと語られました。

  • かかりつけ医師や主治医と相談する重要性
    最後に、健康維持に必要な知識を学び、自分で健康を維持する重要性を説かれた上で、かかりつけ医や主事医に相談するということが大切だと語られました。

※注:
「健康日本21」…1.食生活・栄養、2.身体活動・運動、3.休養・心の健康づくり、4.タバコ、5.アルコール、6.歯の健康、7.糖尿病、8.循環器病、9.がんという9つの分野について、具体的な数値目標を59項目制定。
「健康日本21(第2次)」…1.健康寿命の延伸と健康格差の縮小、2.生活習慣病の発症予防と重症化予防の進展、3.社会生活を営むのに必要な機能の維持及び向上、4.健康を支え、守るための社会環境の整備、5.栄養・食生活、身体活動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善という5つの方向性に沿って55項目の目標を制定。

参加者の声

  • 適切な健康管理方法が、個人によって異なるというのは、生活習慣をコントロールしていく上で、とても大切なことだと学びました。情報をうのみにしないことも必要だと思いました。
  • 改めて自己管理の重要性を知らされました。健康寿命を少しでものばせる様注意したいと思いますありがとうございました。
  • データを多く使っていたので、大変判り易かった。今回の講義は健康に対する意識向上につながると思う。
  • 今自分の生活に必要な知識を数値で知ることが出来ました。具体的でわかり易かった。