みえアカデミックセミナー2021
三重大学公開セミナー
「人生100年時代に向けたフレイル予防」の事業報告

開催日
2021年7月17日(土曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から14時50分まで
講師
三重大学大学院医学系研究科看護学専攻 准教授 福録 恵子さん
参加人数
64名
参加費
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和3年度は7月16日から8月25日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、18年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。



令和3年度の三重大学公開セミナーは、大学院医学系研究科看護学専攻 准教授 福録 恵子さんを講師にお迎えしました。

三重大学大学院医学系研究科看護学専攻 准教授 福録 恵子さん

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  • 【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
    高齢化が進む中、健康寿命の延伸に向けた取り組みが重要視されています。特に新型コロナウィルス感染症による高齢者への心身・社会面への影響は大きく、コロナフレイルによる負の連鎖を防ぐ必要があります。
    本講演では、フレイルに関する知識を深めるとともに、予防のために意識・実践していただきたいことについて、研究報告をもとにお話します。

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講師から「フレイルという言葉を知っていますか?」と質問されると、ほとんどの受講者の方がご存知でした。
  • 健康寿命について
    冒頭では、平均寿命と健康寿命(医療・介護に依存せず、自立した生活ができる生存期間)の違いについて、男女差や二つの寿命の間にどれくらいの差があるのかについて説明いただきました。健康寿命は長寿のために重要な要素であり、食事や身体活動、社会参加など約75%は自分自身で管理が可能なのだと語られました。
寝たきりの状態になると2週間でおよそ2割の筋肉が萎縮し、無重力空間にいる宇宙飛行士は1日で1年分の筋肉が失われている可能性があるのだそうです。
  • フレイルについて
    体がストレスに弱くなっている状態を示す「フレイル」について詳しく説明いただきました。まず、日本におけるフレイルの有症率について簡単に触れられた後、フレイルの大きな特徴は可逆性と多面性にあると講師の福録さんは述べられました。フレイルは一度その状態になっても直ぐに機能障害の状態に陥るのではなく、本人の意思など何らかの介入で健康な状態に戻ることが可能であり、特定の決まった原因があるのではなく、身体面や精神・心理面、社会面などさまざまな低下問題により引き起こされるそうです。そして、特にフレイルへの影響が大きい各要素について詳しく解説していただきました。

■フレイルと孤食
たとえ家族と同居していても、孤食だと死亡リスクや鬱となる可能性が高まると言われており、独居が問題ではないという意外な事実を教えていただきました。

■身体的フレイルと筋肉減少
何もしなければ40歳以降は平均すると1年に1%ずつ筋肉量が減少し、若い頃と比較すると高齢者は30%の筋肉が失われる計算になると解説されました。特に寝たきりの状態になると2週間で2割の筋肉が萎縮する可能性があるとのこと。また、日本人は世界でもトップクラスで座位時間が長く、一日の座っている時間が平均約7時間にもなります。座位時間が長くなればなるほど脚部筋肉への負荷が減り、筋肉量低下の大きな原因や全身の血流が滞り、糖が代謝されなくなることで免疫機能の低下にもつながるのだと説明していただきました。

■フレイルと骨粗鬆症
要介護となる原因の内約30%が運動器の低下が関係しており、フレイルと骨粗鬆症を引きおこす原因は似ているため、要介護の危険性が高まることや、骨粗鬆症の検診受診率と要介護率の関係性についても教えていただきました。

  • コロナフレイルについて
    新型コロナウィルスの流行により、外出の機会が減ったと感じる人や物忘れが気になるようになったという人が増えているというデータを示され、実は運動よりも社会活動に取り組む方が寝たきり予防の効果が高く、フレイルになりにくい傾向があると研究データを紹介いただきました。そして、インターネットを利用している人の方が、積極的に社会活動を行うようになったり、インターネットでの交流によりうつ病の発症のリスクが減少したりするというデータがあることから、上手にインターネットを活用することでコロナ禍においてもフレイル予防につなげてほしいと語られました。
  • フレイル予防のためのセルフチェック
    セミナーの終盤では、自分のフレイル度を確認する時間や、簡単にサルコペニアを確認できる方法などを講師の福録さんに紹介していただき、受講者の皆さんが実際にやってみる時間もありました。

    最後に、フレイル予防として大切なことは「栄養」「身体活動」「社会参加」の3つであり、何よりも現在の自分の状況を意識することが予防の第一歩となると講師の福録さんは語られました。


★特別企画★
講演中にフレイル予防のセルフチェックとして紹介していただいた、部位別の筋肉量の変化が数値でわかる「体組成測定器」を、講師の福録先生に当日会場に持ってきていただきました。実際に測定される方もみえました。
福録先生が現在研究されている、「運動器不安定症高齢者の骨折を予防するデバイスフリーシステムの構築」についてもセミナーの中でご紹介いただきました。

参加者の声

  • フレイルについて知らなかったので、勉強になりました。自分の健康状態をたえずチェックする必要を感じた。ありがとうございました。
  • ありがとうございました。日頃から特に気をつけて行動したいと思いました。
  • 健康寿命を維持するには特に社会参加が大切であると再認識しました。
  • 83歳となりフレイルについて心配しています。本日の講義は大変参考になりました。