みえアカデミックセミナー2021
ユマニテク短期大学公開セミナー
「そうだったのか! 2020年『新学習指導要領』の大改革‼」
の事業報告

開催日
2021年7月16日(金曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時10分まで
講師
ユマニテク短期大学 学長 鈴木 建生 さん
参加人数
35名
参加費
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和3年度は7月16日から8月25日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、18年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。



令和3年度のユマニテク短期大学公開セミナーは、学長 鈴木 建生さんを講師にお迎えしました。

ユマニテク短期大学 学長 鈴木 建生 さん

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  • 【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
    明治以来の教育改革と言われる『新学習指導要領』が2020年から小、中、高校と年次進行で実施されています。「主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)」の実現される教育が目標です。知識・技能の習得だけではなく、思考力や判断力、人間性の涵養(かんよう)までを視野に入れた改革。これまでの教育と何がどう変わるのか。分かりやすく解説します。

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講座中には示された図から読み取れることは何か考えたり、振り返りや気付いた点など受講者が書き出したりする時間が設けられ、講師の話を「聞く」だけでなく自身がどう「学ぶ」のかという新しい教育スタイルを実践していただきました。
  • 学習指導要領の改訂の背景
    まず、これから一緒に学ぶ仲間意識を育むためとして、講師先生から促されて、近くに座られた受講者さん同士で軽く会釈をしあってから講座が始まりました。
    続いて、2020年に行われた『学習指導要領』改定のポイントについて、1.偏差値や高校・大学に入るためといった学校の中で閉じられた教育から社会に開かれた教育に変わったこと、2.自ら学び、興味を養う「一人」の学習から他者と意見を交わし学びあう教育へ変化したことを説明いただきました。


学習指導要領の改定で最も忘れてはならないことは、仕組みや制度が変わるのはもちろんのこと、教育活動を支える人間・教師がどう変わるかであると講師の鈴木さんは熱く語られました。

■工業化社会から知識基盤社会へ
何故、『学習指導要領』の改定が必要となったのかについて、工業社会・集団競争社会の形成発展が教育に与えた影響や、社会情勢やそれに伴う社会構造の変化などの歴史背景をもとに説明いただきました。そして、これまでの教育は工業社会の中で成果をあげたが、これだけ社会が変化しているのに教育スタイルだけが150年以上変わっていないのはむしろおかしいのではないかという問題点をあげられ、お話しいただきました。さらに、現代は既に知識基盤社会・知識活用型社会に移行しており、変化に対応する思考力・判断力・表現力が「生きる力」となると語られました。

学校教育の限界
子どもたちが学校でも家でもひたすら早さと成果を求められる様子を小学生が書いた作文を例に解説され、日本の子どもの「自分を価値のある人間だと思う」という考え方が先進国の中では最低水準であり、そのことが不登校児童の増加やいじめの低年齢化、校内暴力・引きこもりにつながっていると説明されました。

「学習指導要領の改訂の理念」と方向性を説明できる 三位一体の改革
学力の三要素を付けるための教育という、学習指導要領の改定のポイントを「何ができるようになるか」・「何を学ぶか」・「どのように学ぶか」についてまとめた図をもとに説明いただきました。

■アクティブラーニングとは何か
■学力の3要素のためのアクティブラーニング
今回の学習指導要領の改訂で重要となるのが、初めて盛り込まれた「どのように学ぶか」という項目であると、講師の鈴木さんは語られました。キーワードなるアクティブラーニング(主体的・対話的で深い学びを実現する授業)について、個人の学習から協同学習へと、学習観の転換が起こっていることを説明されました。その上で、「アクティブラーニング」=「グループワーク」であると勘違いしている教員がいるが、「主体的にやらせている」という考え方はおかしいと指摘され、アクティブラーニングに取り組んでいる学校の例を紹介されました。

  • 大学入試改革と非認知スキルの関係
    学力の三要素を問う入試へと変化していくことや、実際に行われているグループワークで行う入試を実践している私立大学の入試改革を紹介していただきました。そして、将来的には成育歴の中で培われた非認知能力が問われる入試改革が行われるのではないかと推測され、学校で学ぶ意義も「何を学ぶか?」よりも「誰と学ぶか?」が重要となると説明されました。

■家庭の社会経済的背景と学力と非認知スキル
■非認知能力を育む家庭教育という私教育の可能性
保護者と子どもの学力の関係について図をもとに解説いただきました。
そして、非認知能力(学びに向かう力・人間性等を示す「見えない学力」)の重要性と、そのために必要となるGRIT=「やり抜く力」について説明いただきました。これからは、才能よりもやり抜く力を育むことが大事であると語られ、大人からの子どもの努力を認める言葉がけの重要性やポイント、失敗から立ち上がる経験を支援し、「負けの美学」といった日本人特有の固定観念で、子どもに諦め癖をつけさせてはいけないなど、具体例を用いて説明されました。

最後に、新学習指導要領の改訂は、教育の目的が生徒の幸福教育で生徒が幸せになることであり、ひいてはSDGsにも示される「誰一人として置き去りにしない」社会の実現への一歩につながると講師の鈴木さんは語られました。

参加者の声

  • いい意味で予想外の内容でした。三人の哲学者の言葉が新鮮で、新しい学びに目を覚まされた感じです。私自身の自己改革もめざしていきたいです。
  • 学習指導要領のことだけでなく、人間として生きる上で、年齢関係なく重要なことを広く学ぶことができました。どうもありがとうございました。大変参考になりました。たくさんの貴重な情報をどうもありがとうございました。
  • 最近のSDGsへの流れ、GRITの大切さについて理解できた。
  • 本日は次元の高い本当に良い講座であったと思います。