みえアカデミックセミナー2020
三重大学公開セミナー
「 ベートーヴェン生誕250年を迎えて
―音楽が語る彼の人間像― 」の事業報告
「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(2020年度は7月17日から8月27日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、17年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。

令和2年度 第5回目の三重大学公開セミナーは、
教育学部音楽教育講座 特任教授 兼重 直文 さんを講師にお迎えしました。
************************
- 【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
18世紀の西ヨーロッパに興った啓蒙思想を引き金に、神中心から人間中心の社会へと移り変わりました。ベートーヴェンはこの啓蒙思想に多大な影響を受けたといわれていますが、彼がどのように受け止め、自らの創作活動に反映したか、作品に触れながら紹介します。そこからベートーヴェンの人間像、そして後世に伝えようとしたものは何であったかについて考えてみましょう。
***********************

- 【講演要旨】
1.ベートーヴェンとの出会い、関わり
・恩師の体験から
・交響曲第5番「運命」2台6手版の編纂と初演
2.ベートーヴェンを聴いてみよう
・ピアノソナタNo.23「熱情」
・ピアノ協奏曲No.5「皇帝」
・交響曲第5番「運命」
3.『運命』を取り巻く時代と作品誕生の背景・作品解説
・ベートーヴェン交響曲第5番『運命』
・ベートーヴェンの時代と啓蒙思想
4.まとめ ―音楽が語る彼の人物像―

はじめに、ベートーヴェンに関する兼重先生の恩師との思い出や関わりについてお話しいただきました。
そして、ベートーヴェンの「熱情」・「皇帝」・「運命」を実際に演奏を聴いてみながら、それぞれの曲のエピソードや特徴、ベートーヴェンが使用した技法について解説いただきました。
ベートーヴェンの曲の中でも有名な交響曲第5番「運命」について、時代背景や作品誕生の経緯、「運命」という曲の特徴としての、第1主題(運命の動機)の存在と劇的な展開について説明いただきました。また、第1楽章冒頭の『運命の動機(※1)』を第2楽章、第3楽章、終楽章でどのように再現、変容させているのか、『運命の動機』を多用しているにもかかわらず、聴く人を飽きさせず惹き込まれる魅力があるのかなど、第1楽章から終楽章の曲の演奏をもとに「運命」について分かりやすく考察していただきました。
神の信仰にかわり人間の理性を尊重する啓蒙思想がもたらしたベートーヴェンへの影響、バロック音楽から古典派音楽への移り変わりと社会的背景、そこから生まれた音楽家の意識変化を通して、ベートーヴェンの人物像に迫りました。最後に、ベートーヴェンの最後のピアノソナタ「ピアノソナタ第32番の第2楽章」を聴き、ベートーヴェンの曲が、現代の私たちに何を語り、何を伝えようとしたのかについて、兼重先生の熱い思いを語っていただきました。
【※1:『運命の動機』とは、交響曲第5番「運命」第1楽章冒頭の有名なメロディー「ジャジャジャジャーン」の4つの音のこと】
- 聞いていてベートーヴェンのことを詳しく教えてくれたのでもっとベートーヴェンのことを知りたいなと思いました。僕もピアノを習っているのでいつかベートーヴェンの曲をひきたいなと思いました。
- 知識なく聴くときと、音楽家視点で感じた事などを聞いてから、聴くのとは、大きな違いがあると思いました。楽しく聴くことができ、とても良かったです。先生の熱情を感じました。ありがとうございました。
- ベートーベンのことをこれほど熱く細かく解説してもらう機会がなかったので今日はとても楽しく感慨深いものがありました。この次ベートーベンの曲を聴くときには、これまでと異なる音楽の世界に出会えるかもしれないと思っています。ありがとうございました。
- あっという間の2時間余でした。ベートーベンの音楽について多くを知ることができてよかったです。先生の熱意あふれるお話に感動しました。