第76回名盤を聴く【~「東洋の奇跡」と讃えられた天才ピアニスト~ 田中希代子特集 】の事業報告

「名盤を聴く」第76回は、戦後単身フランスへ渡り、日本人として初めて、ショパン・コンクールなどヨーロッパのメジャーな国際コンクールに入賞し、「東洋の奇跡」と讃えられた天才ピアニスト、田中希代子の特集でした。
この日のプログラムは希代子の生涯を紹介する短い映像、肉声のインタビューなど盛りだくさんの内容で構成され、参加の方の中には仙台や名古屋で実際に演奏を聴いた方もいらっしゃいました。
希代子といえば、代表的な演奏として、ショパン、ドビュッシー、ラフマニノフが挙げられますが、この日最も心を奪われたのはモーツァルトの『ピアノ協奏曲第24番ハ短調』です。

演奏を聴く前に講師より「この演奏は全盛期を迎えようとする35歳の時に録音され、希代子は同じ年の12月に体調を崩し膠原病となり指が動かなくなってしまう。演奏の後半、熱気を帯びてくる様子について作家・百田尚樹は『自分の運命を知っているかのようだ』と著書に記している」と解説がありました。同じ曲でも演奏家によって音が違うことは当然ですが、その演奏家の生涯を知ることによっても音が違って聴こえることを改めて実感した瞬間でした。
後半には現・美智子上皇后との縁も紹介されました。平成のはじめ、希代子に関するラジオ番組のテープを御所望になり、一緒に撮影した写真をピアノの上に生涯飾っていたということ、希代子が64歳でこの世を去った時には美智子さまが手ずから庭で摘んだ草花で作った花束を彼女が好きなグリーンのリボンで結び、「希代子さんの演奏は、私の心の支えでした」というコメントと共に深い悲しみを表したというエピソードを紹介した講師の目には涙があふれ、この日の講座は終了しました。
- 【プログラム】
1.クープラン:聖道女モニカ
2.クープラン:ティク・トック・ショック(オリーヴ絞り機)
(1961年 ポーランド・ラジオ・テレビ放送局 録音)
3.ドビュッシー:ベルガマスク組曲より 「月の光」
(1961年8月 文京公会堂 録音)
4.ドビュッシー:前奏曲 第2巻より 「花火」
(1961年11月&12月 文京公会堂 録音)
5.ショパン:練習曲嬰ト短調Op.25-6
(1955年ショパンコンクールのライブ録音)
6.ショパン:24の前奏曲 Op.28より 変ホ短調 アレグロ
変二長調 ソステヌート「雨だれ」
(1964年8月 ワルシャワ 録音)
7.モーツァルト:ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491
第1楽章 アレグロ
第2楽章 ラルゲット
第3楽章 アレグレット
(指揮)クルト・マズア
ベルリン放送交響楽団
(1967年5月2日、3日 東ドイツ放送局 録音)
――――――― 休 憩 ――――――8.ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
第1楽章 アレグロ・マエストーソ
第2楽章 ラルゲット
第3楽章 ヴィヴァーチェ
(指揮)ズジスワフ・グジニスキ
ワルシャワ・フィルハーモニー交響楽団
(1955年3月18日 ショパンコンクール ライブ録音)
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淡々と話す希代子 -
- 知らなかったすばらしいピアニスト、膠原病がにくい。64才は若く惜しい人。存命なら98才。ありがとうございました。すばらしいひとときを。
- 53~54年前(20代の頃)聴いて強い感動を受け、その後演奏の噂を聞くこともなく長年胸につかえていたが、本日この講座で演奏を聴けて感銘を受けました。
- 大変に感動いたしました。その為、残念ながらあまり書くことができません。申し訳ありません。大変なお時間ありがとうございました。