みえアカデミックセミナー2017
高田短期大学公開セミナー
講演1「多様化する家族、変容する地域社会~マイノリティに向けられる「まなざし」~」
講演2「他者にひらかれたからだづくり~運動と身体機能の視点から~」
についての事業報告

開催日
2017年8月23日(水曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時45分まで
講師1
高田短期大学 子ども学科 講師 寳來 敬章さん
講師2
高田短期大学 子ども学科 准教授 柳瀬 慶子さん
参加人数
77名
参加費
無料

「みえアカデミックセミナー」は県内の高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。毎夏、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生に少し高度な学習をわかりやすくお話ししていただいています。2017年度は新たに1校を参加校に迎え、全15日程開催しています。前身となる「みえ6大学公開講座」から既に20年を超え、「みえアカデミックセミナー」としては、14年目となります。今後も皆様に期待していただけるようなセミナーをお届けしていきたいと思います!!

第14回目の高田短期大学公開セミナーでは、子ども学科 講師 寳來 敬章さんと准教授 柳瀬 慶子さんを講師にお招きし、講演1では現代家族の特徴や課題を中心に多数派と少数派の関係性について、講演2では他者とかかわり合う「からだ」と身体機能がどのように関連するのかや、心身の在り方にどのような影響があるのかについて講演していただきました。


「家族」とは何か?という普段意識しない疑問について、講師先生が説明されるのを皆さん熱心に聴いていました。

講演1「多様化する家族、変容する地域社会~マイノリティに向けられる「まなざし」~」
「家族」が時代や社会情勢によって変容される中で、自立性を持つと同時に閉鎖性を持つようになってしまったと、現代の「家族」の在り方について特徴と課題を説明していただきました。一般的に「家族」は安心感や安らぎを与えてくれる対象として捉えられ、「世間」は緊張感を強いられるつめたい対象として捉えられる傾向があると説明されました。この考え方には近代家族化、核家族化が影響しているとおっしゃられ、農業を中心としていた直系家族制から大多数が農業者からから労働者へと移り変わったことで、個人の独立性が重視されるようになり家族が小規模化し核家族化が登場した過程を解説されました。

そして、核家族化によってかつては経済機能・生殖機能・教育機能が家族固有の機能ではなくなったことで、「家族」と「世間」を比較した場合「家族」には愛情や絆などお金では買えないあたたかいものが残っているはずだという思い込みが生まれてきたとも説明されました。現在問題となっている虐待や家庭内暴力といった家族間の問題も核家族化が影響しており、昔も同じ問題は起こっていたが、昔と今の大きな違いは核家族では一種の密室状態になってしまい、問題を発見する人が周囲にいないため隠蔽されてしまい事件になってしまっていることを説明されました。国際結婚や人間関係が縮小する一方で、生活スタイルは外向きとなるために、「地域社会」との関わりがより一層重要になっていると語られました。続いて国際結婚や在留外国人の増加など「地域社会」についても多文化化が進んでいることを説明され、多文化共生の必要性を説明されました。
多文化を理解するためには自国文化を理解し、異文化を理解することが重要とおっしゃられました。現代は多様化社会であり、そこにはマジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)が存在し、国籍以外にも性差や出自など様々なところでマジョリティにとっては当たり前とされる価値観が、マイノリティいにとっては当たり前ではないということを理解し、文化には優劣があるわけではなく「異なる」だけだという認識を持たないと無意識のうちに差別的な目で相手をみてしまっているとかたられました。そして、マイノリティに向けるまなざしとは自分を見つめる事であり、まずは自分たちを見つめなおし、理解することから始めなけれいことや「みつけよう」「聞こう」とするまなざしが必要だとおっしゃられて講演1のセミナーは終了しました。

実際の体験をたくさん交えて講演いただきました。受講生の方も最後まで興味深そうに講演に参加されていました。

講演2「他者にひらかれたからだづくり~運動と身体機能の視点から~」
まず、となりの席の人との自己紹介と握手から講座は始まりました。いきなりの講師先生からのお題でしたが戸惑うことなくみなさん楽しそうに演習に参加されました。握手について人間は感情をシェアしていく生き物であり、「相手の手を握っている」「相手に手を握られている」「温かい」「嫌だ」など状況や相手によって様々な感情が生まれてくることについて自分の感覚の中身が他者による感情によって変化することを説明されました、
 

続いて、「ふれあい」の効果を説明され、実際に隣の人の背中に手を置くとどのように感じるのかを受講生の皆さんは実践されました。そして、触覚と感覚はつながっていることを説明され、「ふれあい」は体温の保持を生み、それが安心や愛着につながるというメカニズムを説明されました。そして、人間は進化の過程で獲得した認識として二人以上だと楽観的な考えを持つことが可能になることを山登りに例えられて説明されました。
続いて「運動」がうまれる身体のシステムについて説明され、感覚を司る「受容系」と神経などの「伝達系」や筋肉などの「運動系」のバランスによってによって私たちの身体は実際に動かすことが出来、従来の指導では運動系を鍛えることが重要視されていたけれど、実は一番初めに動き出す「受容系」が重要であることが近年注目されるようになったと説明されました。
そして、その受容系の中でも最も早く獲得された触覚器や味覚器が人間の感覚の中で実は一番最後まで保持することが出来る感覚であり、そのため「ふれあい」はとても重要な役割を果たしていると語られました。
さらに、人やモノとの関係の中で自己の身体をどう位置づけるかといった状況に合わせた身体の動きについて近年注目が集まっていることを説明され、受講者の皆さんに割り箸を人差し指で支えあうと実験をしていただきなが解説されました。
そして、他者にひらかれたからだとは、自分らしさをどう表に出していくかにもつながるのだと色々な実習を交えながら語られて講演2のセミナーは終了しました。

「マジョリティ」と「マイノリティ」は特別な状況下で生まれるのではなく、世代間や性差・出自など身近な場所で生まれると語られました。
(講演1講師 寳來 敬章さん)
近年他者との「ふれあい」について苦手意識を持つ人が特に若い世代に多くなっていることが心配だと語られました。
(講演2講師 柳瀬 慶子さん)

参加者の声

  • 家族のあり方の変化についてわかりやすく分析してあり非常に面白かったです。
  • 家族構成により家庭はたのしくなり一般社会によっても世界的に必要性が生じることがわかりました。
  • ふれる事や寄り添う事の意義を演習を通じて実感出来ました。 
  • 「他者にひらかれた体づくり」の講座は実技を交え大変わかりやすく参考になりました。
  • (講演1)マジョリティとマイノリティの関係性についてよく理解できました。理解だけでなく実際に自分自身の行動として動いてみたいと思います。 (講演2)演習を通じて感覚について理解できました。よくわかる説明で好感が持てました。
  • 多様化する家族・変容する地域社会では家族や地域社会について見直すことができた。自分の家族や地域社会についてしっかり見ていこうと思う。後半の他者にひらかれたからだづくりでは老齢化してきた自分の身体と心のバランスについて考えることができた。