みえアカデミックセミナー2017
四日市看護医療大学公開セミナー
「高齢者と子どもの世代間交流~その心身の影響」
についての事業報告
「みえアカデミックセミナー」は県内の高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。毎夏、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生に少し高度な学習をわかりやすくお話ししていただいています。2017年度は新たに1校を参加校に迎え、全15日程開催しています。前身となる「みえ6大学公開講座」から既に20年を超え、「みえアカデミックセミナー」としては、14年目となります。今後も皆様に期待していただけるようなセミナーをお届けしていきたいと思います!!
第9回目の四日市看護医療大学セミナーでは、老年看護学 准教授 小林 美奈子さんを講師にお招きし、少子高齢化に直面している現代の課題でもある高齢者と子どもの世代間の交流について実例を交えながら講演いただきました。

世代間交流の歴史
まず、世代間交流活動がどのように始まり、発展してきたのかについてお話しいただきました。1960年代後半にアメリカから始まり、1970年には日本でも活動が開始され、1990年代後半以降には政策として実践が広まり語られ、その理由として1960年から1970年代にかけて急速に世代間の断絶が広まったことが挙げられると説明されました。
そして、世代間交流とは都市・過疎化や核家族化、過剰な匿名化など現代が抱えるコミュニティ崩壊にかかわる様々な問題を解決するために、世代と世代、人と人をつなぐ熟慮されたプログラムを必要とすることだと語られました。
デイサービス利用者の世代間交流の結果
デイサービスで世代間交流を実践した際の調査結果を紹介していただきました。調査を行う事によってどのような交流が有効であり、また実際の高齢者の様子や実践する職員の意見を知ることができると語られました。子どもが踊りや歌を披露する「主体型交流」と高齢者と子どもが握手をしたり、一緒に何かをする「双方型交流」の際の表情の違いや肯定的な発言の有無では「双方型交流」の方がデイサービスの高齢者の方の表情や発言に好影響が出た一方で、交流後の疲労や症状の再発にも注意が必要であると実情を説明されました。また、介護職員の方の意見も紹介され、行動・心理症状・情緒面・身体的健康面へ好影響が出たプラスの意見や、血圧の上昇による健康面への影響や、イベント時のキラキラした洋服を子どもたちが着てくることについての世代間ギャップによる世代間交流への不快感を持つ高齢者もいることなど、単なるアンケートでは中々浮かび上がってこないマイナスの影響についても紹介していただきました。
世代間交流の実施地域と活動内容の特性
世代間交流活動に対する地域特性について先生から質問を交えてご紹介がありました。全国で一番多く実施されている活動は読み聞かせであり、東北地方では調理・食育活動が近畿地方では手芸や楽器活動、九州地方では体験談(戦争)の語りが地域特性で見受けられると説明されました。続いて、世代間交流が盛んな地域とそうでない地域の理由や人気の昔話について受講者の方へクイズを出されながら紹介されました。
続いて、三重県の世代間交流について、楽器活動や手芸が盛んな一方で昔遊びや園芸・体験談・方言紙芝居などはあまりに行われていないことが紹介されました。先生から現在あまり盛んでない活動について、是非参考にして活動に役立ててほしいと説明があると、熱心にメモされる受講生の方もみえました。
地域の実情に合わせた世代間交流プログラムの実践
地域に暮らす高齢者と子どもが交流を通して共に地域を支えて行く機会を持つために、地域特性を活かした効果的なプログラムの作成に挑戦した研究を実践例を基に紹介していただきました。
研究では地域の共感意識を通した相互交流を目指す「回想法」を活用し、体験談を語る際にも高齢者の方が一方的に体験を語るのではなく、地域の過去と現在について写真を交えながら子どもも一緒に語り合う機会を設けると効果的だと紹介されました。
また、地域の昔話を影絵で表現した活動では、子どもたちにハサミの使い方を教えたり、昔を振り返ることで高齢者の役割意識・生きがいの向上に繋がったり、子どもたち幸福感の向上にもつながったりと有意義だったことを説明されました。
そして最後に、世代間交流は双方に心身の向上や幸福感の増大、社会参加の推進などのメリットをもたらすことを説明され、近年は核家族化が進んだことで子どもたち同士も年齢が違うと交流する機会が少ないため、あらゆる世代があらゆる時期に世代間交流が継続できる社会を目指してほしいと語られこの日の講義は終了となりました。

- 私自身もお年寄りの方と子ども達の世代間交流を実施出来るようなワークショップを企画しており、そのうえで世代間交流におけるメリット・デメリットを分かりやすく説明していただいたので参加してよかったです。今後の参考にさせていただきます。
- 私も後期高齢者ですが世代間交流に参加してみたいと強く思います。
- 世代間交流を何となくとらえていたが、色々な面があることが分かってよかった。
- 世代間交流が異なる世代に各々に何かをもたらすという重要な役割があることを知りました。生産的活動ができなくなっても、人は色々な生き方ができると学ぶことができて良かったです。
- これからの社会にとって必要になるとりくみだと思いました。ありがとうございました。