みえアカデミックセミナー2017
三重短期大学公開セミナー
「経済成長・格差・少子高齢化」についての事業報告

開催日
2017年8月1日(火曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時15分まで
講師
三重短期大学 法経科 准教授 金江 亮さん
参加人数
83名
参加費
無料

「みえアカデミックセミナー」は県内の高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。毎夏、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生に少し高度な学習をわかりやすくお話ししていただいています。2017年度は新たに1校を参加校に迎え、全15日程開催しています。前身となる「みえ6大学公開講座」から既に20年を超え、「みえアカデミックセミナー」としては、14年目となります。今後も皆様に期待していただけるようなセミナーをお届けしていきたいと思います!!

第6回目の三重短期大学公開セミナーは、法経科 准教授 金江 亮さんを講師にお招きし、経済学の概論や少子高齢化とはどういったことなのかについて講演いただきました。

一般的な経済のイメージも学問的に考えればそうではない場合があると語られました。

労働価値説
まずは、経済学の概論や系譜のお話から講義が始まりました。
「労働価値説」とは、単純に言えば商品の値段は労働の時間で決まるというものです。アダム・スミスやデイビッド・リカードといった古典派と呼ばれる経済学者から始まり、有名なマルクスや新古典派・新しい古典派と呼ばれる様々な学者達に引き継がれ発展してきた学説だとご説明がありました。そして、それぞれの経済学者の学説の特徴を、狩猟時間と獲物の数の比較や私たちの生活に身近な仕事と賃金の関係など具体例を挙げられながら分かりやすく解説していただきました。特に、マルクスの労働価値説(マルクスの搾取率)については、現代の普通の企業に対してブラック企業とホワイト企業がどのような状態にあることなのかということを解説され、現代社会の経済活動に対して、経済学からはどのように考えられるのかについても説明していただきました。
また、その時代に最も経済活動が盛んな国から優れた経済学者が生まれることが多く、19世紀ではイギリスから、20世紀ではアメリカで経済学者が多く登場したともおっしゃられました。
続いて道具や機械を使った場合の労働について、先生からは生産に機械が関わる場合でも、機械自体が労働で生産されているため「生産物」は究極的にはすべて労働で作られているという説や、機械を使った場合の労働量について、様々なケースを用いて説明があり、受講生の皆さんが真剣に聞いていらっしゃいました。

経済学の概説は少し難しい印象でしたが、身近な例を挙げ、解説されると皆さん熱心に聞いていらっしゃいました

経済成長
産業革命後の現在の先進国と呼ばれる国々の経済成長率を図に示され、日本は年1パーセント程度しか成長しておらず、どんな国であろうと成長率は落ちるものであり、成長しているとされる国も人口の違いによる成長率や年数に違いがあったとしても、現代が資本主義社会として行き着く先まで行ったということであると説明されました。
ただ、「ゼロ成長社会」と呼ばれる社会であってもGDPはあくまで数値上のものであり、昔のVHSと現在のBlu-rayの商品の対比を例に挙げられ、価格が同じであっても中身の商品が良くなっていることもあり、そんなに悲観すべきことではないと仰られました。

格差・少子高齢化
国同士の格差は縮まるが、国内の経済格差はどう考えればいいのか?という疑問に対し経済学からの考えを説明されました。理論上も経済格差は縮まらず、富者も貧者も経済成長で豊かにはなるが、格差は残る。もっと理論上だけでいえば初期の資産格差の比率が永続することになると仰られ、経済格差はやはり深刻な問題であると話されました。
そして、少子高齢化について、よくある「少ない若者がたくさんの年配者を支えている」というイメージを持たれるが、現役で元気に働ける人が増え、支える側に回っているので世間でいうほど深刻な問題ではないと説明されました。ただし、子どもを産みたいのに経済的な理由や保育所がないから産めないという状態は憂慮すべきことであり、ここでもやはり「経済格差」が問題になってくるのだと語られました。そして、最後に格差解消のための手段としての増税についても経済学の観点からお話があり、この日の講義を終えました。

開会前には三重短期大学の公開セミナーの話題や大学案内をしていただきました。
終了後の個別質問では熱心に講師先生に質問されている受講生の方もみえました。

参加者の声

  • 少子高齢化のことについてくわしくわかりました。
  • なかなか興味深い提案で、私が学んできた経済とは異なりおもしろかったです。
  • 自分のよく知らない経済のことが少しはわかった気がする。経済論がこんなにいろいろと展開されているとは知らなかったので、経済についても気をつけてみていきたいと思う。
  • 格差や少子高齢化の問題は、身近で興味の大きいことです。中々、先が見通せないと思いました。
  • はじめのうちは難しい話でしたが中ごろからわかり易くなって面白くなってきました。少子高齢化の話もまたちがった面からとらえておられてよかった。