平成22年度 定年世代向け男性講座
「オトコの介護を考える~老後を自立して迎えるために~」

開催日
2010年5月16日(日曜日)
開催場所
三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」 1階 生活工房
講師
津止 正敏さん(立命館大学産業社会学部教授・男性介護者と支援者の全国ネットワーク事務局長)

この講座では、定年世代の方を対象として開催しました。男性介護の実状や問題点、いざ介護をすることになったときの為に必要なことを講義と体験者の事例発表、グループワークを通して学びました。

講座の様子

 講義では、男性介護の現状についてお話いただきました。
 現在460万人の要介護者がいるという状況の中、介護に携わるう人のうち3人に1人が男性となっている。「家事ができなくて当たり前だった70代、80代の男性が介護者になったとたん家事を行う必要にせまられる」「30代~50代の息子たちは家庭の大黒柱となりながら、介護もしなければならない」といった現状が出てきている。

 しかし男性が介護すると「どんな課題があるか」「他の人はどのように介護しているのか」、それを知る機会も事例も教科書もない、体験者も伝える機会もない。その経験を社会的経験値として共有財産にということで「男性介護者100万人へのメッセージ」をつくるきっかけとなったお話などをしていただきました。

 参加者は40代~80代の幅広い世代でプレ介護者や介護当事者の方々。受講動機は、他の方がどうされているのか聞きたいという方が大半を占めて、津止さんのお話に真剣な様子で耳を傾けていました。

 事例発表では、津市で実際に妻を介護されている白瀬さんと、松阪で高齢者の生き甲斐づくりとして「生ゴミリサイクル亀さんの家」を立ち上げられた亀井さんのお話を伺いしました。
 白瀬さんからは、「ある日妻が病気で寝たきりになり、突然介護をすることになった。今まで家事など任せきりだったことを自分自身がすべて背負わなければならなくなったことで大きなストレスを背負うこととなった。ただ、辛いことばかりではなく、介護を通じて改めて妻と向きあうことでこの年齢になって初めて夫婦になれたと感じることができた」とお話いただきました。
 亀井さんからは、自分自身が高齢者の生きがいづくりを始めたきっかけの話、また参加者に向け、「60歳までは会社が道をつくってくれる、しかし60歳からは自分自身で道をつくっていかなければならない」などのお話をしていただきました。

ワークショップの様子

 グループワークでは、“老後を自立して生きていくためにできる第一歩”として、地域と家庭で何ができるかについて話し合いました。
 地域では 「ボランティア活動」、「自炊出来るようになるための男の料理サークルに参加」、家庭では「自分の健康は自分で守る」、「人生設計をつくる」など実際にされていることも含めさまざまな意見がでました。

津止正敏さん

 最後に津止先生から老後を自立して生きていくためにどうしたらいいか?のお話がありました。
「SOSを出しながら生きていくこと、誰にも迷惑かけずに、誰からも支援を受けずに生きるということが自立ではなく、社会からのさまざまなサポートを受け、地域と繋がりをつくっていくということが必要である」と話されました。

 参加者からは、「非常にインパクトがありよかった、今までの自分の考え方が甘かった」「初めての参加で視野が広がり、男の介護について客観的に実状が理解できた」との声をいただきました。参加者の方々が今後の「自立」を考えるよい機会としていただきました。

津止 正敏 さん

立命館大学産業社会学部教授
男性介護者と支援者の全国ネットワーク事務局長

京都市社会福祉協議会(地域福祉部・ボランティア情報センター)にて20年間勤務。2001年4月より現職。地域福祉の現場に長らく携わってきたことから、地域を基盤とした社会福祉政策の研究及び地域福祉・ボランティアの政策や組織運営、プログラムについての臨床的研究が主な分野。現在、産業社会学部副学部長、男性介護研究会代表、社会福祉法人みんななかま理事長、障害のある子どもの放課後保障全国連絡会副代表。全国の男性介護者に調査を行い『男性介護白書』(2007年/かもがわ出版)を執筆。2009年3月から男性介護者と支援者の全国ネットワーク事務局長を努める。