平成24年度 女性に対する暴力防止セミナー
気づいてください~あなたのそばの 見えないDV~

開催日
平成24年11月18日(日曜日)
開催場所
三重県伊賀市ゆめぽりすセンター

 毎年、11月12日から25日の「女性に対する暴力をなくす運動」の期間に合わせて「女性に対する暴力防止セミナー」を行っています。
 今年度は、DVをテーマに伊賀市と共催し実施しました。まず伊賀市からDVに関する報告があり、次に伊賀市市民グループ「ポッポ会」「伊賀市子育てインストラクター スマイル母(ママ)」の皆さんによる朗読劇「ひまわり~DVをのりこえて」が上演されました。続いて、沼崎一郎さん(東北大学大学院文学研究科教授)から、「なぜ男は暴力を選ぶのか~DV加害者の実像と対策」という演題で講演がありました。

内容

「伊賀市からのDVに関する報告」

報告者:津田顕克さん(伊賀市健康福祉部こども家庭課主任) 
 初めに、伊賀市のDV被害者支援体制について説明がありました。女性相談の現状が話され、配偶者から暴力被害を受けた女性の相談件数が、年々増加していると報告がありました。その理由としてDVが増えているのではなく、DVの相談ができる場が認知されてきていると考えられると説明がありました。
 そして、伊賀市におけるDVの相談先として、伊賀市こども家庭課や、伊賀警察署生活安全課が紹介されました。

朗読劇 「ひまわり~DVをのりこえて」(公益財団法人横浜男女共同参画推進協会 企画・制作作品)

演者:伊賀市市民グループ「ポッポ会」「伊賀市子育てインストラクター スマイル母(ママ)」
 朗読劇「ひまわり~DVをのりこえて」は、横浜市男女共同参画推進協会が「無名の尊厳ある女性たちの物語を、別の女性たちが伝える」ことを目的に企画・制作した作品です。
 伊賀市の市民グループ、「ポッポ会」「伊賀市子育てインストラクター スマイル母(ママ)」の皆さんが、キーボードによる即興の調べに乗せて、心に残るすばらしい朗読劇を上演しました。
 作品の中では、身体的暴力でないDVを長年受け続け、心身ともに疲弊してしまった女性とその子どもたちが、暴力をのりこえていく様子が語られています。参加者アンケートからは「劇の内容が自分の身近にあるケースで、よく分かった」「演者の、日ごろの練習ぶり熱心さが伝わってきてよかった」などの声がありました。

講演会「なぜ男は暴力を選ぶのか~DV加害者の実像と対策」

講師:沼崎一郎さん(東北大学大学院文学研究科教授)

 DVとは、夫婦や恋人同士など親密な関係のなかで、力や立場の強いものが、弱いものに対して、様々な暴力を使って、意のままに操ろうとすることであり、被害者にとっては、継続的で常態化した人権侵害であると説明がありました。
また、DVは、身体的暴力だけでなく、暴言や脅しなどの心理的暴力、経済的暴力、性的強要などがあり、それらはすべて犯罪である。被害者に責任はなく、犯罪を犯した加害者が処罰されなければならない。しかし、加害者が処罰されにくいのが現状であると指摘されました。
 そして、DVにより被害者や子どもたちは、耐えざる緊張と恐怖を強いられ、大切な人間関係を奪われ、切迫した生命の危険に曝されることさえあり、子どもは、健全な心身の発育を阻害されるとの説明がありました。
最後に、被害者への対応として、情報提供と安全の確保、生活支援と育児支援などが必要であり、行政・学校・警察・民間などが連携を図り支援していくことが大切である。また、DVを防止するためには、若者への予防教育が必要であるとの話もありました。

講座の風景

講師紹介

沼崎 一郎 さん

(東北大学大学院文学研究科教授)
現職:東北大学大学院文学研究科教授。専攻は文化人類学、東アジア研究、男性学。 
経歴:1997年より、キャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワーク東北ブロック代表として、性暴力被害者の支援活動に取り組む。2001年、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市のエマージにて、ドメスティック・バイオレンス加害者の再教育プログラムを学ぶ。最近は、ドメスティック・バイオレンスと児童虐待の被害者支援にも取り組んでいる。既婚、一児の父。
著書:『「ジェンダー論」の教え方ガイド-女子大生のための性教育とエンパワーメント-』(フェミックス、2006年)、『キャンパス・セクシュアル・ハラスメント対応ガイド-あなたにできること、あなたがすべきこと-改訂増補版』(嵯峨野書院、2005年)、『なぜ男は暴力を選ぶのか-ドメスティック・バイオレンス理解の初歩-』(かもがわブックレット、2002年)など。