平成24年度 地域リーダー養成講座
いま、あなたは何をする?
~防災から考える“新しいコミュニティ”づくり

開催日
7月22日(日曜日)、29日(日曜日)、8月19日(日曜日)、9月8日(土曜日)  連続講座(4回) ※初回のみ「公開講座」
開催場所
三重県総合文化センター内 セミナー室C 他
講師
各回の報告書参照

 男女共同参画の視点での災害復興・防災や、普段からの多様な視点でのコミュニティづくりが求められています。そこで、「防災」を切り口に、これからのコミュニティのあり方について考えることを目的に講座を開催。
自治会や自主防災組織、子育て関係活動者、行政での防災関係担当者など、様々な立場の方にご参加いただきました。

【第1回目】公開講座
「災害時に問われる地域力~老若男女で担うコミュニティ防災~」

講師:特定非営利活動法人NPO政策研究所 専務理事  相川 康子さん

相川康子さん 講義の様子

相川康子さん 講義の様子


 講師の相川さんからは、これまでの大震災の経験を踏まえ「防災と男女共同参画」の総論となるお話をいただきました。
 防災・災害時の取組を男性や専門職の仕事・・というように特別なものにしないこと。災害発生時と初期の救命・救出時が注目されがちではあるが、復興までを一連の長いスパンと考え、行政だけなく、地域も含めいろいろな主体の参画が不可欠だ。
 また、災害時に受けるダメージは人や場所によって大きな違いがあり、社会の弱点があぶり出されてしまう。特に子どもや高齢者、女性、外国人にとって不自由な生活を強いられたり、最近では貧困の状況に置かれる人が生活再建の道が見出せない、などの状況がみられる。
 だからこそ、普段から地域の中でそういった存在の人が見えているか。何かあった時にすっと助けに行ける、そんなダメージの最小化、つまり減災対策が必要だ。
 そのために、普段から地域に住むいろいろな当事者の声が反映されたコミュニティづくりを行っていくこと。また、地域で活動する子育て団体、NPO、また保健師・助産師など専門家団体など、いろいろな主体と連携し、複数のアプローチをすることで地域のセイフティネットを厚くしていくこと。そういった取組が「災害にも強いまち」につながるのではないか、とのお話を頂きました。

ワールドカフェ

ワールドカフェの様子

ワールドカフェではたくさんの人と情報交換


  講演終了後はワールドカフェにて参加者同士、交流を行いました。ワールドカフェのテーマは「これから望まれるコミュニティ像」。
「災害時に要援護者、帰宅困難者の問題を誰が助けるのか?」「地域から見えにくい地域の弱者をどう守るか」「自治会の役員は男女バランスよく担ったほうが良い」など、防災やコミュニティのあり方について様々な意見が出されました。

【第2回目】三重県と三重大学の連携による防災人材プロジェクト 紹介&男女共同参画の視点で考える“新しいコミュニティ”

講師: 三重大学准教授、美し国おこし・三重さきもり塾副塾長  浅野 聡さん 
   ドーンセンター統活ディレクター  仁科 あゆ美さん 

熱心に講義を聴く参加者

熱心に講義を聴く参加者

 「美し国おこし・三重さきもり塾」副塾長の浅野聡さんや、同塾事務局の亀山裕美子さん、同塾修了生の伊東三津子さんから、同塾での取組内容や実践事例についてお話をいただきました。
 また、ドーンセンター(一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団)統括ディレクターの仁科あゆ美さんからは被災地の現状についてお話がありました。
 「復興過程で男女の固定的役割分担意識が強まっている。例えば、被災地の男性が、地域を守らねばという強い責任感から押しつぶされそうな気持ちを抱いていた時に、初めて「相談」を利用したところ「男性だって辛いときには泣いていいんだ」という気づきを得、心が軽くなった」といったお話がありました。私たち一人ひとりに男女共同参画はとても身近で重要なこと。男女ともに固定的役割分担意識に囚われない意識の必要性がお話されました。

【第3回目】実践事例紹介&“まち”の現状・課題をみつめる

講師:ドーンセンター統括ディレクター 仁科 あゆ美さん

 講座3回目には、地域で伊勢市消防団副団長として活躍されている新谷琴江さんから地域での実践事例紹介がありました。
 地域活動の中では、普段からの会議で対等な立場で意見が言いやすい環境づくりの重要性などが語られました。また、伊勢市消防団の取組の中で、「要援護者への支援」として、地域の民生委員との連携をスタートされた例を元に、地域での様々な主体との連携が大切である、とのお話をいただきました。
 また、講座後半には「まちの現状・課題」を洗い出すグループワークを実施。
 「地域の役員は男性中心。多様な視点での地域づくりになっていない」「外国人や高齢者など住民の情報を把握できていない中、災害時の対応が課題」といった地域の現状や課題が出されました。

グループワーク内容を発表

グループワーク内容を発表

【第4回目】「防災から考えるこれからの“新しいコミュニティ”づくり」

講師:ドーンセンター統括ディレクター 仁科 あゆ美さん

 改めて「防災」を切り口に男女共同参画の視点でのまちづくり考えるために、「現場で学ぶ女性と多様なニーズに配慮した災害支援事例集」(東日本大震災女性支援ネットワーク作成事例集)を元に、災害発災時から復興時、平時など時期を追って必要になる取組や男女共同参画視点の重要性を再確認しました。
 また、第3回目で出された様々な課題に対して、私たち自身に何ができるのか解決策を考えるグループワークを実施。
 グループワークでは、「自治会等の役員に男女両方を入れ、複数名で活動できる体制づくり」や「多言語での防災マニュアルの作成」「いろいろな当事者の声を集める交流会の開催」等の案が出されました。
参加者からは「様々な活動をしている参加者との話しで、地域の課題解決の糸口が見つかった」
「今後、地域で多様な視点での防災講座をやりたい」という感想をいただきました。


講師紹介

相川 康子さん

(特活)NPO政策研究所専務理事
神戸新聞社で20年間勤務し、阪神・淡路大震災の災害報道やその後の防災・復興に関する社説を担当。退職後、各地で防災と男女共同参画について講演や研修を行っている。今年度は復興庁男女共同参画班の非常勤職員も務める。

浅野 聡さん

三重大学 大学院 工学研究科 建築学専攻 准教授、美し国おこし・三重さきもり塾副塾長
専門は都市計画・景観計画・防災まちづくり・協働型まちづくり。 国交省・三重県・市町等の都市計画審議会・景観審議会等の会長・委員を歴任しし、まちづくりプロジェクトに多数携わる。日本建築学会奨励賞、三重県さわやかなまちづくり賞、国土交通大臣表彰まちづくり功労者等を受賞。

コーディネーター・講師
仁科 あゆ美さん

一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団 統括ディレクター
1994年ドーンセンター(現大阪府立男女共同参画・青少年センター)開館時から職員。1998年より事業担当。啓発講座や文化表現事業、働く女性の支援事業の企画、NPO・各機関等との連携・協働事業も担当。現在は内閣府「東日本大震災被災地における女性の悩み・暴力相談事業」の事務局を担う。