フレンテみえ 特別講座
“これから”の企業 & ビジネスパーソン へ
~未来を生き抜く ライフスキル × マネジメント・ノウハウ~
変わりつつある働く人のライフスタイルについて考える「フレンテみえ特別講座」。
自らも育児休暇を取得した「イクメン社長」、サイボウズ株式会社代表取締役社長の青野慶久さんを講師に迎え、開催しました。
父親としての立場と経営者としての立場、双方の視点から育児経験や社内の取組事例など様々なエピソードを交えながら、ワーク・ライフ・バランスへの取組が働く人や企業双方にとっていかにメリットがあるのか、キレイゴトだけではない現実的な側面も含めたお話を、ユーモアを交えながらたっぷりお話いただきました。
講座の一部をご紹介します!
働く父親としての視点から・・・

一昨年の長男誕生で2週間、昨年末の次男誕生後は毎週水曜日を育休に充てています(※講座当時)。最初はそれほど関心がなかったのですが、同社のある文京区の成澤区長が育休を取得したことがきっかけで自分も育休を取得したところ、マスコミも含め大きな反響がありました。実際に育児を経験すると辛いことも多くありましたが、育児そのものも上達したり時間を意識して働くようになったりするなど様々な「進化」を感じられました。
次男の誕生からは何をするにも2人分となり、自分の時間も極小化して思うように働けない葛藤と常時戦っている状態ですが、なぜか体調は良いです。恐らく子どもがいるおかげで無駄な残業がなかったり適度な運動があったりするからだと思います。そして、自分の中の父性を感じる一方、働く大人の立場として考えると子育ては将来の市場を創造することでもあり、未来を創る重要なものであるという意識も芽生えました。
育児はとても大変。でも、仕事より育児の方がはるかに大切で、人類最大の仕事は育児だと思っています。今は「リアル・イクメン」と胸を張って言えます。
経営者としての視点から・・・
IT業界は先進的だと思われますが、大変厳しい就労環境のためあまり人気がありません。その中、サイボウズでは「より多くの人が、より成長して、より長く働ける環境を!」をコンセプトとして職場環境の改善に取り組んでいます。
まず初めにオフィスのデザインを一新したところ、社員の雰囲気まで明るく良くなりました。また、残業を多くする、しないなどの働き方を自分で選んで宣言する制度を採り入れました。結婚や育児など自分のライフイベントに合わせて働き方を変えられます。育児休暇は最大6年取得でき、在宅勤務も全職種の社員が(目標設定など一定のルールのもと)月に4回まで行えます。在宅勤務は生産性の向上などメリットが多いのでぜひ始めてほしいと思います。他にも「感動課」や「DS(ゲーム)部」の設置など様々な福利厚生の制度も導入していますが、取組を続ける間に(2005年は28%だった)離職率は、昨年が4%、今年は7%と、自身の基準である10%を切るようになりました。社内結婚も増え、出産ラッシュも迎えています。
しかし、どれだけ社員に心地よい会社であっても実績が伴わなければ意味がありません。生産性の向上につながってこそ、採り入れた様々な制度も持続できます。人事制度は社員を喜ばすためではなく、会社の生産性向上のためのものです。そして、これらの制度はほとんど社員からの発案です。「質問責任」と「説明責任」をしっかり果たし、自分で獲得する。人事制度は与えられるものではないと思っています。
IT技術者としての視点から
いま、「クラウド」という新しい技術が生まれています。数分で顧客のニーズに合わせたアプリケーションが作成でき、常に進化をし、必要がなくなればいつでも解約できるというこのテクノロジーは、会社に行かないと何も出来ないという働き方、そして女性も出産や子育てと仕事を両立できる働き方へと、ビジネスシーンを大きく変える可能性があります。ITの世界的企業などでは既に女性が(妊娠中の女性も)活躍していますが、このクラウドによってさらに、年齢、性別、妊娠の有無などに捉われずに働ける環境へと社会が大きく変化していくことでしょう

最後に・・・
これから結婚、子育てをする可能性のある男性の皆さん、育児休暇を取りましょう!取得すればまず妻や子どもに感謝されますし、多様な価値観が身につきます。自分も、家庭だけでなく仕事にも役立つ様々な価値観を得られました。そして、これからは育休の取得が高く評価される時代になります。今はまだ理解されない環境かもしれませんが、将来は育休取得が自身のブランドとなり、出世につながる可能性もあります。
自分も2人の子どもの育児体験によって大きな変化がありました。日本は家庭を顧みずに働くという価値観でここまで繁栄してきましたが、そろそろ日本人は働き方やその考え方を変えていくべき時期にあると思います。長く続く不況を脱するためにも、育児を大切にする、育児をしている人が素晴らしい、育児をしている人が一番偉い、という価値観を持った社会に変えていく必要があると思っています。
これからも、自分たちにできることから、一緒にがんばっていきましょう。

そして後半は、急遽決定した豪華企画!多気町の万協製薬株式会社代表取締役社長、松浦信男さんに登壇いただき、青野さんとの「公開ミニ対談」を開催しました。
このお2人、お互いの「会いたい!」コールがついに実現した初対面!しかもほぼ“フリートーク”という状況にも関らず、会場からの質問を交えながら「働くということ」や「人財発掘・育成について」など、経営者としての視点を含めて1時間超にわたって様々なお話をいただきました。
最後に、「(ITの進化で)今、ついに女性が活躍するためのインフラが整った。女性を含め多様な人財を活かせる会社が伸びるのは当然。自信をもって進めてほしい(青野さん)」「子どもを産み育てるという人として尊い行為に女性だけでなく男性も社会も一緒に参加し、21世紀を豊かな社会にするという大人の責任を果たしていきましょう(松浦さん)」と、お2人から力強いメッセージをいただきました。
講師紹介
青野慶久(あおの よしひさ) 本名:西端慶久(にしばた よしひさ)
1971年、愛媛県生まれ。
大阪大学工学部卒業後、松下電工(株)を経て、1997年、愛媛県松山市でサイボウズ(株)を設立、取締役副社長に就任。マーケティング担当として新市場を切り拓く。その後、プロダクト・マネージャーとして新商品の開発責任者を務める。 事業企画室担当、海外事業担当を歴任し、2005年4月に代表取締役社長に就任。
2010年8月、育児休暇取得。 第二子が誕生した現在も毎週水曜日を育児休暇に充て、週4日勤務で“イクメン”中。著書に「ちょいデキ!」(文春新書)がある。
対談出演
松浦信男(まつうら のぶお)
昭和37年兵庫県生まれ。
万協製薬(株)に入社後、阪神淡路大震災での本社・工場の全壊を乗り越え、平成8年、新工場(三重県多気町)の建設を機に現職。そのエネルギーに満ちたキャラクターと、TV「カンブリア宮殿」への出演や講演など幅広い活動で全国から注目を集めている。
著書「人に必要とされる会社をつくる」(日本能率協会マネジメントセンター)。11月には自身で作詞作曲、歌唱する多気町の観光ソング「たきにきた」CDも発売。
- がむしゃらに仕事を頑張ること=成長することだと思っていましたが、改めて働きながら結婚・子育てについて考えてみようと思いました。(20歳代/男性)
- 育児休業を取得すると決めました。(30歳代/男性)
- 日本を変えていく企業のあり方を学べた!!(30歳代/男性)
- うちの職場にもこんな上司がいればいいなーと思いました。自分がそうなれるよう、がんばりたいと思います。(40歳代/男性)
- とても楽しくお話が聞けました。イクメンという言葉は聞いたことがありましたが、どういうものかはいまいちわかっていなかったので、今日お話が聞けてとてもいいことだと思いました。次、こういう機会がありましたら、また参加したいと思います。(20歳代/女性)
- 子どもが産まれてはじめて育児の大変さがわかったというのは、女性も同じです。それを男性も分かち合うということで、短期間でも男性にも育児に専念する時間を持ってもらえるのは、とても有意義だと思いました。(30歳代/女性)
- とてもおもしろくて時間が短く感じられました。制度についての考え方など、とても興味深かったです。笑いの対談の中でもキラッと光るお話を聞けて、楽しかったです。(40歳代/女性)
- 私は中小企業を支援する税理士ですが、今日はおふたりの企業経営者のユニークな対談を聞かせていただいて、とても参考になりました。楽しかったです。(50歳代/女性)