令和5年度女性に対する暴力防止セミナー
「暴力を目撃した時にできること」
今年度の女性に対する暴力防止セミナーは、暴力を許さない社会にするために、暴力を目撃したその場でできることはなにか、ただ見ているだけの傍観者ではなく“行動する目撃者”になるにはどうすればよいか、について講師の福田由紀子さんや参加者のみなさんとともに、暴力を目撃した体験談をもとに話し合いアイデアを出し合いました。
●体験談
Aさんはスーパーのレジに並んでいる時にDVの現場を目撃した。Aさんの前に買い物カートで男性が割り込んできたので「並んでいます」と伝えたところ、男性は笑顔で「隣の列に並んでいた。防犯カメラを見てもらえばわかる。わかりにくいレジ列の線を引いている店が悪いよなあ?」とAさんに同調を求めてきた。その後、その男性のパートナーがレジに追加の商品を持ってくると、男性は急に怒り出し「店に防犯カメラを見せるよう言え!俺が並んでいたことを証明させろ。こんなわかりにくい線の引き方をしているから俺が疑われた。店長に謝罪させるよう言え。そもそもレジが遅いからこんなことになっている。レジにもっと早くするよう言え!」と怒鳴り出した。パートナーは「恥ずかしいからやめて」と言い、早くレジを済まそうとしていたが、男性は怒鳴り続け、怒りながら買い物カートを通路に押して放り出していった。その後、パートナーも居心地が悪そうに早々に立ち去った。この経験からAさんは、何もできなかったことへの悔しさや無力感、罪悪感を持っている。
この体験談をもとに話し合った内容は、①その場で行動を起こせない理由、②その場でできるのはどんなことか、③その場ではできなくても、後からできることはあるか の3点です。グループごとにアイデアを出し、それを全体で共有しました。講座で共有された意見をご紹介します。②と③のできることに関しては”加害者に対して”、”被害者に対して”、”自分自身に対して”、”その他”と分類してまとめました。
①行動を起こせない理由
・スルーした方が楽 ・関わりたくない ・そのうち済むだろう ・できない理由を探してしまう
・自分たちへの被害を最小限にしたい ・注意して自分に矛先が向くのが怖い
・刃物などを持っていたら怖いから ・モラルの無い人に声をあげるのは揉めそうで怖い
・きつい言葉遣いの人は怖いので声をあげられない
・「夫婦のもめごとに首をつっこむな」と言われそう ・家でまたDVがひどくなるといけないから
・被害者も大ごとにしたくないと思っているのではないか
・勇気が出せるか?周りで味方をしてくれる人がいたら…
・結果的に時間がかかることになり、まわりに迷惑をかけてしまうのではないか
②その場でできること(加害者に対して)
・なだめる ・男性に声をかける ・周りの方の迷惑になることを伝える ・さすまたを探す
・警察に電話する ・男性に「先にどうぞ」と声をかける
・「順番を代わりますよ」と言って代わる ・「何を怒ってるんですか」と問う
・怒鳴られている女性にも、怒鳴っている男性にも声をかけてみる
・「元の列に戻ってもらったら?」と言う ・「間違うことありますよね」と言う
・「録画しようかな」と言って証拠を撮る ・「加害者が恥ずかしいよね」と聞こえるように言う
・開栓したペットボトルを落とす ・小銭をばらまく
・店長や店員を呼ぶ ・警備員を呼ぶ
②その場でできること(被害者に対して)
・パートナーの方の保護 ・「あんな大きい声かわいそうに」と聞こえるように言う
・パートナーに「大丈夫ですか」と声をかける
・パートナーに「つらかったでしょ?ごめんなさいね」と言う
②その場でできること(自分自身に対して)
・すぐ逃げられるようにする
②その場でできること(その他)
・Aさんに一言フォローする ・Aさんの意見に賛成していると言葉にする
・自分の家族も不快な思いをするので自分の家族に声をかける
・列の後ろの人、周りに並んでいる人にも同意を求める ・隣や後ろの人に話しかける
・一人では怖いのでみんなで力を合わせる ・みんなで協力して録画する
・どこに言ったらいいんですかねと周りの人に聞く ・誰か(具体的に)協力してくださいと言う
・みんなにわかるように声をあげる ・一番近くにいるお客さんにおかしい状況を呼びかける
・列に並んでいる年長者に声をかけ注意してもらう ・他の男性に同意を求める
③後からできること(加害者に対して)
・改めて感情が落ち着いている時に、DVであることに気づかせる話をする
・車のナンバーを控え、スーパーの要注意人物リストに入れる ・警察に届ける
③後からできること(自分自身に対して)
・後でこの時の気持ちを他人や家族などにたくさん語る ・相談室に相談してみる
・対応の仕方の引き出しを増やしておく ・スマホに緊急ブザーの音を入れておく
・次に同じような場面に遭遇した時のことをシュミレーションしておく
・傍観者になってしまったことを真摯に反省
③後からできること(その他)
・店にある意見箱に投書する ・店に電話する ・お店に残って店の担当者に事実を伝える
・店に列をわかりやすく工夫してもらう ・列のわかりやすい配置提案
・店側にトラブルについて知らせて改善策を求める ・SNSに載せる
・スーパーのスタッフで今回のことを話し合う ・訓練をしておく ・警察に対応を聞く
・色々な人にアドバイスをもらう ・暴力目撃時の対応を提案する
・レジにDV相談窓口の案内や啓発パンフレットを置いてもらう ・DVカードを店舗に置いてもらう
・警察に連絡しますというポップで阻止してもらう ・スーパーにDVの出前講座に行く
・DVについての啓発講座を主催する ・本人には配れないけど周りに啓発カードを配る
・周りの人に「あれは暴力だ」と啓発する ・周りの人と怖かったね、あれどうなん?と話し合う
講師の福田由紀子さんからは、暴力を目撃した人も傷つきを感じることや、暴力を目撃した際の介入のポイントなどについて解説をしていただきました。介入方法としては「5D」…Distrast(注意をそらす)、Delegate(第三者に助けを求める)、Document(証拠を残す)、Delay(後でフォローする)、Direct(直接介入する)という5つの方法があることを話していただきました。
この事業報告をお読みいただいているあなたも、暴力を目撃した際にできることを知り、暴力を許さない社会にするため、行動する目撃者のおひとりになっていただけたら心強いです。
- あらためて声を上げていくことの大切さを感じました。現時点でのDVへの意識の低さは早急に変えていかないとです。
- 参加して良かったです。話し合いで1つの解決が出来たと思います。
- 今まで傍観者となることはありましたが、どうしたらよかったのかを今日は深く考えることができ、今後は行動できる自分でありたいと思います。
- 皆さん何かしら暴力を目撃された経験があったので、暴力が身近にあるものだと改めて感じました。自分に何ができるのか、よく考えたり周りの人と話し合ったりしたいと思います。
- 「暴力はやる方が100%悪い」力強い。世の中に広がればいいのに。助け合えるのが当たり前になればいい。色々な意見が聞けて良かった。講師の方がステキな方で良かった。