平成28年度女性に対する暴力防止セミナー
性と性暴力
子どもへの関わり方を実践で学ぶ

開催日
2016年11月12日(土曜日)
開催場所
三重県文化会館 2階 大会議室
講師
森田 ゆりさん(エンパワメント・センター主宰)

 毎年、11月12日から25日の「女性に対する暴力をなくす運動」の期間に合わせて「女性に対する暴力防止セミナー」を行っています。

 今年度は、森田ゆりさん(エンパワメント・センター主宰)による、性被害の実態や被害者への関わり方などについてのセミナーを実施しました。

森田さん

性暴力は「沈黙の犯罪」とよばれている

 まず、講師の森田さんより、子どもの性被害は、私たちが想像する以上に多く、また、私たち周りの大人たちが気が付きにくいという実態と、その背景についてお話いただきました。

 性暴力は、出来事そのもののダメージはもちろんですが、その後、周囲の人達による対応により、ダメージがさらに大きくなることがあります。被害者と加害者には圧倒的な力の差があり、もし、被害のことを口にしたら、被害者への攻撃が始まり、信じてもらえなかったり、責められたりするという社会の構造があります。その中で被害者は訴えることがむずかしく、「沈黙」を守らされてしまうのです。それが、性暴力が「沈黙の犯罪」と言われる理由です。被害者の多くは、「隙のあった自分が悪い」と思ったり、強烈な自己嫌悪、無力感を抱き、本人にとって今後の生き方に大きな影響をあたえてしまいます。

 また、被害者が子どもの場合、加害者は子どもが知っている人間であることが多いため、家族や社会は「そんなこと起こるはずがない」と性暴力の事実をなかったことにしようとします。性暴力があったと認めてしまうと、周りの人たちの生活が大きく変わってしまうことになるからです。こうして、被害者は沈黙を強要されていきます。 そのせいで、子どもへの性暴力は、表面化しづらい傾向にあります。

 私たち周りの大人たちが、性被害にあった子どもの恐怖とダメージがいかに大きいのかを知ること、子どもが勇気を出して打ち明けた際に、大人に信じてもらえないショックが二次被害を引き出してしまうことを知る必要があるとお話がありました。

 私たちは誰でも、街中を安心して歩く権利があり、被害者は全く悪くないのに、被害者に落ち度があったから被害にあったのだという偏見が加害者を罪の意識を持ちにくい現状につながっています。
 また、間違った用語が多いのが性暴力の特徴です。例えば「暴力」は「愛」ではないのに、子ども(小児)への性暴力を行う人間を「小児性愛者」と呼ぶなど、加害者側の視点からの言葉を使っているせいで社会の偏見を助長し、被害の深刻さが伝わりにくくなっています。
 私たちが無意識に行っている誤った言葉の表現や、正しい性の認識を持とうとしないことで、性被害にあう子どもたちへ深刻な影響を与えている場合があるのです。

子どもへの接し方とエンパワメント

 次に、被害にあった際、なるべく早くに、信頼している身近な人に、「聞いてもらえる・受け止めてもらえる」ことで、被害者の回復を助けるというお話がありました。周りの大人が、被害者の視点に立って関わりを持つことや、被害者が不安や葛藤を抱えながらも暴力を受けたことについて語る勇気や力を誠実に受け止め、本人の回復の力を信頼し、よりそってあげること。また、言葉を掛ける際は、「よく話してくれたね」「あなたの話を信じるよ」「あなたは悪くないよ」などのキーワードを用い、「がんばってね」ではなく「がんばってるね」と声をかけてあげることも大切とお話がありました。
 最後は参加者の皆さんでワークを行い、「あなたの話していることは、大切な話だ」と相手が分かるように聴くこと(能動的傾聴)などを学びました。
 参加者からは、「身近な人間が意識を持っていくことが大切」「子どもへの関わりにとても参考になった」などのコメントを多くいただき、性暴力への意識や具体的なケース事例、被害者が子どもだった場合の対応例についても学べた有意義な講座となりました。

参加者の声

  • 被害者の心に寄り添うことの大切さを改めて勉強させていただきました。
  • 子どもの性被害の現状を知ることができた。加害者の更生について難しいとのことで、早く対策が見つかれば良いと思う。
  • 分かっているようで自分が性暴力についてまだまだ知らないことがたくさんあることに気づきました。