企業も人も幸せになる、これからのWork&Life Style

開催日
2015年11月15日(日曜日)
開催場所
三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」  多目的ホール 他

 今や女性の活躍は、国の成長戦略の中核として位置づけられ、女性の活躍なくして企業の成長はないといっても過言ではありません。そんな中、今、企業に求められるものは何なのか。企業も人も幸せになれるこれからの「Work&Life Style」を考えるためのイベントを開催しました。

三重県男女共同参画フォーラム
みえの男女(ひと)2015

ワークショップ1
「「趣味は仕事」でいいですか? 大人生活を楽しもう!
 Life×Work×Socialでより豊かな人生を」
講師:川島高之さん

 基調講演ではイクボスについてお話しいただいた川島高之さん(三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社代表取締役社長、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事)を講師にお迎えし、なぜ会社としてだけでなく個人としてワーク・ライフ・バランスが必要なのか、個人にとってのワーク・ライフ・バランスに焦点を当てたワークショップを開催しました。

 川島さんは夫婦共働きなので、家事・育児を「やらなければならない感」もありましたが、育児に関しては「やりたい感」から主体的にされたそうです。育児だけではなく、人は何かしらしたいことがあるはず。人生は1回きりなのだから、仕事だけではもったいない。若いころに目指していたことや没頭していたこと、大切な人のためにしたいこと。そんなことを今からでもやりましょう、と提言されました。
 そして仕事をとるか私生活をとるか、コンフリクト(対立)、あるいは二者択一と考えてしまう人がいますが、どちらもすればするほどシナジー(相乗効果)が起きるとのこと。
 川島さんがPTA会長をされていたときは、月1回の役員会に、会社人とは違う時間軸を持った主婦や、会社人とはまた世界が違う先生、町会長や民生委員長など地域の長老が集まって、まさに人種のルツボ。その中で合意形成して、先に進めていかなければならない。それに比べたら会社の組織運営は、共通用語があり方向性も一緒で非常に楽。PTA活動をしていた5年間が、マネジメント能力を高めてくれたとお話しいただきました。
 また少年野球のコーチをされていたときは、根性論が通用しない今の子どもたちのモチベーションをいかにあげて、楽しみや喜びを与えながらコーチをしていくかに苦心され、それは今の部下育成にも活かされているそうです。
 他にも部下であるワーキングマザーたちの仕事ぶりにも触れられました。子どものお迎えがあるから職場を定時に出なければならない、だけど人に迷惑をかけたくない彼女たちは、段取りを組んで非常に効率的に仕事をこなし、またいちいち上司に伺いをたてる時間はないので、どんどん主体的に取り組むようになっていく。いつまでもダラダラと残業ができる人と、ワーキングマザーのように時間に制約がある人、どちらが仕事能力が高いでしょうか。
 このように、仕事以外のこと(家事、育児、介護、地域活動、趣味や勉強など)をすることにより、仕事の能力が高まる。多様性が身につく、視野が広がる、人脈が増える、コミュニケーション能力が高まる、働く意欲が高まる、集中力が高まる。仕事能力が高まると、これまで10時間かかっていた仕事が8時間でできるようになり、その2時間をまた仕事以外の時間に使えるという正のサイクルを生むとお話しいただきました。
 また生活者のひとりになるというお話も。すべての経済活動は実生活の延長線上にあり、生活者としてのインプットが仕事のアウトプットになるということです。

 そしてあらためて人生は1回きりなので仕事だけではなく全部やったほうがいい、そしてワーク、ライフ、ソーシャルを全部やると3脚だから人生がブレないと締めくくられました。

ワークショップ1風景

ワークショップ2「自己イメージから考える!わたしのキャリア」
講師:山極 清子さん(株式会社wiwiw社長執行役員、昭和女子大学客員教授)

「結婚しても仕事は続けられるかな…」

「子育てしながらのキャリアップは大変!」

「ついつい仕事を優先しがち。もっと趣味を楽しみたいのに」

 ライフイベントや環境によって、女性のキャリアは男性以上に描きにくい現状があります。とはいえ女性だって『ライフ』『キャリア』とも楽しみ充実させていきたいし、今後は社会や企業からキャリアアップを求められる時代になります。
 そんな女性たちへ、『自分がイメージする自分』を見つめ直し、これからのキャリアにつなげていくヒントが満載のワークショップを実施しました。
 まずキャリアとは馬車が通った道、すなわち自分が歩んできた道だとおっしゃった山極さん。キャリアを考えるときには、生涯を展望してキャリアをデザインすることがポイントだとお話しされました。そして大切なのは自己イメージを明確化すること。『できること』『やりたいこと』『すべきこと』、この3つの重なりを見つけることが自身のキャリア作りに繋がるそうです。
 最後に「諦めずに努力する人にはチャンスがきますよ!」と、メッセージをいただきました。

※このワークショップは平成27年度女性が輝く三重づくり事業の一環として実施しました。

ワークショップ2の風景写真

ワークショップ3「小川先生&佐伯先生と第4次男女共同参画基本計画について考えよう」
講師:小川 眞里子さん
(三重大学名誉教授、三重県男女共同参画審議会 会長)
   佐伯 富樹さん
(三重大学名誉教授、三重県男女共同参画審議会 元会長)

 国の第4次男女共同参画基本計画(素案)が7月末に決定し、8月から9月にかけて全国6カ所で公聴会が開催され、12月に答申される予定です。そこで、この素案をもとに、三重県の男女共同参画基本計画を考察するに当たり、三重県男女共同参画審議会現会長の小川眞里子先生と、前会長の佐伯富樹先生をお招きし、お二人のお話と参加者との質疑応答や意見交換をするワークショップを開催しました。
 佐伯先生から、「国の第3次男女共同参画基本計画と三重県の第2次男女共同参画基本計画との関係から、三重県の地域性を踏まえ、国の計画が県の計画へどのように反映されたか」。小川先生から、「策定中の素案と科学技術における男女共同参画について」のお話を伺いました。
 参加者から、「南勢と北勢の地域性」、「女性科学者の育成」等の質問がありました。
 参加者アンケートでは、「いい資料、お二人の先生方の分析!!来てよかった!!基本計画はつくるのが目的になっています。市のレベルでその市の計画をどう作るかに、市民が話し合い、声を出していかねばと思いました。」「佐伯先生、小川先生共に、第4次の改訂内容のポイントをとてもわかりやすく説明いただき、ワークのテーマどおり充実していました。」との声をいただきました。

ワークショップ3風景

ランチ交流会

 ランチタイムには、「三重県で働く女性同士もっとつながろう!」をテーマに、働く女性限定のランチ交流会を開催しました。
 
 午前中に開催したワークショップ「自己イメージから考える!わたしのキャリア」講師の山極清子(やまぎわきよこ)さんにもご参加いただきました。
 参加者同士の企業PRや名刺交換、写真撮影など盛りだくさんの内容で、カフェ「Cotti菜」の水耕栽培野菜を使ったランチを食べながら、和気あいあいとした雰囲気の中、様々な業種の働く女性が集まり、それぞれが自分のキャリアや想いについて情報交換をおこないました。
 フレンテみえでは、働く女性が自分らしく働き続けるために、「働く女性のネットワーキング化」を進めています。交流会でもネットワークへの呼びかけをしたところ約10名から参加希望があり、ネットワークの輪が広がりました。

ランチ交流会ふうけい写真

ホールイベント第1部
「実践!イクボス式マネジメント“時間vs成果”という新しい視点」

今年のフォーラムは・・・

 昨年度のフォーラムではイクボスの必要性を考えましたが、今年度は一歩進んで実際上司としてどうマネジメントしていくかを、労働時間削減と業績アップを同時に実現した「元祖イクボス」の川島高之さん(三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社代表取締役社長、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事)にお話しいただきました。

 部下が仕事と育児や介護、趣味など仕事以外のことを両立して、仕事の成果もあげるためには、社内制度を整備するよりも大切なことがあります。制度をそろえても、それを使える雰囲気がなければ意味がありません。
 制度よりも大切な上司がしなければならないことは3つです。

  1. オーダーメイドな指導と声掛け
  2. チーム(組織)力を高める
  3. ボス自身の覚悟

1.オーダーメイドな指導と声掛け

 そう言うと「忙しいのに無理」という反応がかえってきますが、プレイングマネージャーなど忙しいからこそするべき。それによって部下が伸びます。そうすれば上司はマネジメントに集中できますし、それを繰り返していくと、ますます部下は伸び、上司はますますマネジメントに集中でき、成果もあがるという正のサイクルができるのです。

 そうするためには、部下を知ること、部下の生活を知ること。多くの上司は、部下は無制約社員という認識で、1対多数の関係、一方通行な関係になっています。そうではなく、部下は全員制約社員と認識し、1対1の関係、双方向の関係にならなければなりません。
 育児、親孝行、介護、趣味、健康、勉強、社会貢献、何かしら部下は大切な私生活を持っています。それを上司たる者は把握する必要があります。
 いまどきプライバシーの侵害やセクハラになるから、個人情報を知るなんて無理と思うかもしれませんが、何もしなければ情報が入ってこないこの時代だからこそ、この努力が必要です。

 私はランチタイムを重視していて、今日はAさん、明日はB君、昨日はCさんと部下を誘い、ここで仕事の話は絶対にしないと決めています。仕事の話は仕事の時間にするようにしているからです。
 そして自分のプライベートの話もどんどんします。50歳になって走ったら足を痛めたとか、子育ての悩み、妻との関係の難しさを女性の部下に相談したりもします。
 そうすると部下も「我が家はこうです」と自然に話してくれます。その積み重ねで、「そういえば田中君、来月保護者会があるって言っていたよな」「鈴木さん、最近福岡の実家に帰っていないでしょ」と言え、そういった声掛けをするだけでも部下の信頼度が高まるし、部下の制約・状況が把握できて、職場をマネジメントできることにつながるのです。

 また部下のWants(やりたいこと)、部下のCan(できること)、職場のNeeds(職場としてこの人にして欲しいこと)をなるべく一致させることが、管理職の仕事。完全一致は難しいですが、少しでも近づけるようにします。その際、部下のWantsは部下にしかわからない。それを話してもらえる関係性を日頃から作っておくことが大切なのです。

 そして部下に仕事を出すとき、例えば年間目標、プロジェクトのゴール、指示した業務の成果物などを、部下と話し合い、合意形成して、部下に腹落ちさせることが必要です。
 1時間でできるレポートを任せるときも、部下がどうも指示した内容を把握していないなと感じたら、話し合う。「いや、僕が求めるのはこういうレポートだよ」「じゃあこのあたりを調べたらいいですかね」「いや、もうちょっとこのあたりを調べてくれ」と10分、15分かけて話し合うこともあります。そうすれば1時間を無駄にしません。
 部下が腹落ちしたら、あとは任せる。細かい管理や指示はしません。部下に腹落ちさせる、そして任せるの2段階です。
その逆が、部下に一方的に「君の年間目標は2千万円だからな。必達だからな。やれよ」と命令して、「A社に行ったか」「B社に行ったか」「あのプロジェクトはどうなった」「ちゃんと報告しろ」「なんでできないんだ」と細かいことをいちいち言ってしまうこと。過干渉の親が子どもに言っているのと同じで、それでは部下は育ちません。そもそも一方通行の業務命令なので、モチベーションがあがらないのです。

2.チーム(組織)力を高める

 まずそのためには「子育て」だけを特別視しないことです。これまで子育て中の女性を働きやすくするために、社内制度を導入したり、休みやすくしたりしてきた会社は多いと思います。それ自体は大切なことで、当然必要なことですが、そればかりに偏っていないでしょうか。
 そうすると、子どもがいない人は「しわ寄せ」がくると思いますし、仕事と子育てを両立してきた上の世代の女性は「若い人は甘えている」と思うかもしれません。そうなるとチームワークはなくなってしまいます。私も子育て中の女性ばかりに配慮して失敗したときがありました。

 今は、社員にはどんどん私生活を重視させています。そして子育てとそれ以外の私生活、どちらが重要ということはない、という雰囲気づくりをしています。そのためにはワーク・ライフ・バランスを自分ごとに考える必要があります。
 問題なのが、ワーカーホリックのミドル男性。私の会社では40代の男性独身部長が、休みをとれと言っても休まなかったのです。山登りが好きということは知っていたので、「山登りに行ってくればいいじゃん」と勧めると、「本格的にやっていたので、行くなら1週間くらいは行きたい」と言い、あとは「1週間休んで行ってくればいいじゃん」「忙しいので無理です」の繰り返し。それをなんとか口説いて行かせました。
 その結果、今では休みをとるようになりました。今年は2回1週間以上の休みをとって山登りに行くらしいです。そうするとその部は、誰もが理由を問わずどんどん休みを取るようになり、そして休みがとれるよう業績をあげようと、すごい集中力とチームワークを発揮する部に変わったのです。

 ワーク・ライフ・バランスは、ひとりでも「俺には関係ない」という人がでないよう、部下に伝えていかなければなりません。休みをとる理由は、介護、育児、趣味、人によっていろいろあります。理由はなんでもいいのです。みんな私生活をもっととろうという気持ちにさせることが管理職、経営者として必要だと思います。
 ワーク・ライフ・バランスが自分ごとになると、お互い様意識が醸成され、チームワークが向上します。そして全員で生産性向上に向かうことになるのです。

3.ボス自身の覚悟

 まず自分でやる覚悟です。上司の言動が部下の時間を奪っている可能性があると意識すること、その出張や接待に部下を連れていかなければならないのか(部下の成長のための出張ならよい)、指示が曖昧ではないか、その雑務は自分でやったらいいのではないか、その会議は上司の自己満足のために開かれていないか。

 同じく「やらないこと」を決める覚悟を持たなければなりません。
 大ボスに対してイエスマンではいけないのです。中間管理職は大ボスや取引先に対しても、「この計画は無理です」「それは受けられません」とNoと言い切ることも必要です。
 部下に対しても、やらないことを決めてあげるのが上司の役割です。私は異動するたびに部下を集めて、仕事の大リストラ会議を行いました。「この会議は廃止、この会議は3回を1回に」「この取引先は手間ばかりかかるからやめてしまおう」と、「やらなくていいリスト」「統廃合リスト」をみんなでつくりました。これをしたことによって1度もトラブルになったことはありません。
 そして、「ヒマ」になる覚悟。
 上司自身が「予定がない」という予定をつくることです。自分がじっくり考えるために、部下が相談しやすくするために、いざとなったときに部下の代打になるために、予定がない時間を確保しておくことが大切です。

このほかにも、無駄な時間をどう削減するか、会議の進め方・設定の仕方や、メールの運用、資料作成などを例に、より具体的にご紹介いただきました。そして最後にボスへのメッセージをいただきました。

川島さんからボスへのメッセージ

    1. ボスが、笑顔と余裕をもって仕事をする。
    2. ボスが、部下の家族や私生活にも配慮する。
    3. 結果、部下のストレスは軽減し、発揮する能力は倍増。
    4. さらに組織の業績も向上し、ボスとしての職責を果たせる。
    5. ボス次第で組織が変わり、部下が変わり、部下の家族や地域も、そして社会も変わる。

企業も人も幸せになる、これからのWork&Life Styleの後半の様子は下記リンクからご覧ください。

企業も人も幸せになる、これからのWork&Life Style事業報告後半ページへのリンク

参加者の声

  • 自分のライフスタイルを見直すきっかけとなりました。女性の味方でうれしかった。夫とふたりで参加して「スッとしました」(夫にきかせたいことばかり話してくれて)
  • 女性の活躍には、上司、家族の理解が大切と思った。今後働く時の参考にしたいと思った。
  • 川島さんのお話はとても参考になりました。仕事をするうえで、時間管理の大切さを感じました。自分の仕事の仕方を見直したいと思いました。
  • 様々な企業の取組を知ることができ、勉強になりました。