社会に声を届けよう!女性のための政治入門塾

開催日
2015年5月23日(土曜日)
開催場所
三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」  情報コーナーレクチャースペース
講師
杉本ゆやさん(三重県議会議員)、柏木はるみさん(前三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」所長、元津市議会議員)
参加人数
11名

日本の人口の半分が女性なのに、社会のものごとを決める国会や地方議会は、ほとんど男性が占め、男性によって運営されています。そのため女性の視点が反映されず、男性には見えない社会の課題が置き去りにされています。

「政治」と聞くと身構えてしまいますが、女性が感じる課題を解決するためには政治の場に声を届けなければなりません。

この講座では現職県議会議員の杉本ゆやさんと、弊センター前所長で元津市議会議員の柏木はるみさんを講師に迎え、女性が政治に関わり社会を変えていくことについて、参加者と一緒に考えました。

 

まず杉本さんのお話。

一期目当時女性議員は2人だけ。意図せずして、その2人の口から出ることは、自分の生活に根ざしたこと、子どものことや社会的に弱い立場の人のことが多かったなような気がする。

特に学童保育について。津市が合併して間もなく、郡部の小さい校区には学童保育がなかった。国の補助金は10名以上が対象で、5から9名も補助金を出しましょうと予算をとったのが、前任の女性議員。その後、杉本さんが初質問以来、5人未満のところにも補助金を出すよう働きかけ続けるうちに、県も国に粘り強く交渉して、昨年知事も提言してくれた。そして今年度から10名という枠が日本全体で取り外された。これは三重県ががんばったから。女性たちが声をあげ続けたから。

ほかには、ひとり親家庭のこと。母親の働き方や健康、そこで育つ子どものことが心配で取り組んでいる。先輩から「マイナーなところを狙うな。選挙に出るなら、メジャーな、多くの人の共感を得られるところを狙え」と言われたが、どうしてもそういうところが気になる。ひとり親、貧困を取り上げ、その子どもの学力をどうつけていくか。三重県では3年前、ひとり親家庭への学習支援を始めた。そういったテーマがテレビでも取り上げられ、マイナーな問題がメジャーになってきた。声をあげて、調査をして、形にしてきたのは女性が多い。女性が自分の目線で、当事者として声をあげていくことがすごく大事。生活者の視点をもっているのは、圧倒的に女性。現在の日本の状況では、育ち・経験から、男性目線と女性目線が違っているので、当事者として声をあげていくべきだし、その数が増えれば増えるほど、もっと社会は変わっていく。女性議員が2人から3人になったとき、「ちょっと変わった」と思った。同じことを気にする、同じことをテーマに取り上げる、発信する、口が増える、発言の数が増える。民主主義だから、賛同するたくさんの議員が声をあげることが重要になる。だから当事者としての女性がもっと参画しなければ。

 

続いて柏木さんから、住民としてどう声を届けるか、お話しいただきました。

行政の窓口に言っても聞いてもらえなかった。ではどうするか。質問事項を文書で出して、文書で回答をもらう。住民監査請求、情報公開請求をかける。請願書や陳情書、要望書を出して、議会につなげることもできる。リコールや署名を集めて提出することはひとりでもできる。

ひとりの声だと「あなたの問題でしょ」で終わってしまうことでも、その声がたくさんあると、これは社会の問題だと取り上げられる。重要なのは仲間を募ること。

またその問題をどこに届けるのか。行政に持っていくのか、議会に持っていくのか。両方に持っていったほうがよい。いろんなところで声があがると予算がつきやすいので、いろんなところに働きかけて届けることもできる。

 

社会活動をしている参加者からは、イベントに市長が来てくれたことにより、市や県を後援につけることができた、そして他県で実施するときもその実績で、その県や市を後援につけることができたというお話しをしていただきました。これは一点突破の成功例。行政が動く背景には議員が働きかけている場合も多く、柏木さんは「そのためにはちゃんとした議員を選ぶこと。住民の声を聞ける人で、多様な視点を持っている人。議会の多様性の究極は、男女の議員が半数ずついること。杉本さんのような議員だと、これは重要な社会問題だと気づいて、仲間の議員を動かして、政策化していっていると思う。賛同を得ないと多数決は通らないから、横の会派をつなげたり、多くの議員に働きかけたり、委員会でも言おう、こうしよう、と中の仕組みがわかっているから、いろいろな手法が使える」と述べられ、杉本さんは「私が不得意な分野もある。そういった場合は、適切な議員にお願いするようにしている。そのための多数、51人の議員がいる。多様でなければならない。そう考えるとやはり女性が少ない」と述べられました。

 

また地域コミュニティの運営が難しいという課題が参加者からあげられ、杉本さんから高齢者の居場所づくりをしている地域の事例や、福祉バスと家事援助の運営をしている自治会の事例が紹介されました。

「うまくいっている地域は自治会長が違うということですか?」との質問に、「上に立つ人によって随分違うと思う。だけど覚悟がいる。自治会長って半端なく大変。しなければならないことがたくさんある。なかなかひとりではできない」と杉本さん。

それに対し柏木さんからは「自治会長が大変なことはわかる。だけどもうちょっと仕事をリストラしたらって思う。やらなくていいこともあるかもしれないし、やらなきゃいけないことはたくさんあるけど、今年は重点的にこれだけやっていこうでもいいと思う。自治会長の仕事が大変なら、仕事を分けてもいい。サブ、サポーター、コアメンバーを作るとか。仕組みを変えていけばいい。優秀な自治会長がいる間はいいけど、その人がいなくなったらポシャるのはダメ。今の自治会長のやり方をそのまま引き継がないといけないわけではない」と提案されました。

おふたりとも訴えられていたのは、「変えようと思っても現状を知らないと変えられない。言っているだけではダメで、中に入ることが第一歩。地域の声を拾える行動力と実践力がないと、人は信用してくれない。自分で汗をかいて、一緒に汗をかいてくれる人がどれくらいいるかが重要」ということでした。

 

最後におふたりからのメッセージ。

柏木さんからは「こういう場ができたこと、こうやって自由に話ができる場所が大事。政治は難しくない。女性もできる。もしかしたら女性のほうが得意かもしれない。だって暮らしの課題をわかっている。自分を生きにくい分、自分以外の人の問題もよくわかる。決して政治を諦めないで欲しい。変わっていないように見えていても、変わっている。変化は遅いかもしれないけど、諦めないで」、杉本さんからは「格差社会、貧困の問題は大きい。一億総中流と言われた日本のイメージをまだ抱いている人がいるけど、もうそんな時代ではない。6人に1人の子どもが貧困家庭に育っている。そういう子どもたちが社会に出ていかなければならないし、40%の人が非正規労働者。暮らしの安全・安心が根底から変わってきている時代。どういう社会にしていくかは、やっぱり民意。議員を選ぶのは国民のみなさん。諦めている場合じゃないぞ、無関心でいる場合じゃないぞと私は思う。暮らしの中の声は政治の課題であり、政策に反映すべき課題。まだまだそういう声、女性や障がい者のみなさん、さまざまな方の声を聞けていない、反映できていない。まだまだがんばらないとと思う。『なにやっとるかわからん』というところは反省しますが、政治を諦めないで」との言葉をいただきました。

 

「政治」は普段敬遠されがちなテーマでありますが、私たちの生活に非常に密着しています。女性に限らず、当事者が暮らしの中で感じる課題は、意思決定の場に声を届けなければ、変わっていきません。そのことを講師のおふたりから、経験や事例を交え、わかりやすく伝えていただけました。

そして今回のように、暮らしの延長から身近な課題を話し合える場が増えていくことが、社会を変える一歩になると、杉本さんも柏木さんもおっしゃっていました。

今後、フレンテみえでもそのような場が増えるよう尽力していきます。

講座風景写真

参加者の声

  • 現場の議員さん、元議員さんの声をきけてよかったです。
  • 政治という大きな課題ですが、身近に思えた。
  • 日常の疑問や不満の解決方法が見い出せた気がします。知らないうちに自分の中に壁をつくっていましたが、とにかく周りに声をあげていくことが、先決だと思いました。
  • もっと時間が長くてもよいと思います。話したいこと、聞きたいことが、皆さんにももっとあったと思います。