平成20年度フレンテみえ「男性講座」 フレンテみえファンファーレ2008
「ワーク・ライフ・バランス~パパたちの挑戦!」
安藤哲也さん講演会「パパの極意~仕事も育児も楽しむ生き方」

開催日
2008年4月26日(土曜日)
開催場所
三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」  1階多目的ホール他
講師
安藤 哲也さん(特定非営利法人 ファザーリング・ジャパン代表理事)

 2008年は国が進める仕事と生活の調和「ワーク・ライフ・バランス」元年です。
この「ワーク・ライフ・バランス」をテーマとして子育て世代の方を対象に、安藤哲也さん講演会を行いました。講演後には安藤さんを囲んで「パパたちの本音トーク」も開催しました。また、他にも子育て支援型フリーマーケットや男性グループ「ちょいワルおやじ」のカフェ、「みえ次世代育成応援ネットワーク」の紹介ブース、「ワーク・ライフ・バランス」パネル展も開催しました。子育て中のパパを中心にたくさんの方にご参加いただきました。

 安藤哲也さん講演会「パパの極意~仕事も育児も楽しむ生き方」のお話からピックアップしてご紹介します。

ファザーリング・ジャパンの「パパ力(ぢから)検定」

「ファザーリング・ジャパン」では父親が子育てを楽しむ事業を展開しています。そのなかで2008年3月に第一回子育てパパ力(ぢから)検定、通称”パパ検”を全国で開催しました。”パパ検”を通じて、子どもの成長、子どもや育児を取り巻く社会問題、あるいは自分の企業の就業規則の問題、モデルとなるべき海外の子育て事情などの知識を得ることで、自分の中の意識を変えていくということを目的としています。

子育ては新ビジネスにもつながる -スウェーデンの事例

 内閣府では、2007年12月に「ワーク・ライフ・バランス憲章」を発表しました。一省庁である厚生労働省ではなく内閣府が発表したことで、「これは国全体の問題であって単なる小子化の問題ではない」と発表したことになります。
 スウェーデンでは、男性の育休取得率は90%。男性の育休が法律で義務付けられているからです。子育てをすれば男性の社会的視点が広がり、それが新しいビジネスにつながる、そして豊かな次世代をつくっていくエンジンになる、このようにに多くの企業のトップも行政も理解しています。だから育休を取った男性を昇進させます。
「男は子育てして一人前」という社会通念がありますから、誰でも違和感なく育休を取得します。日本は北欧の国より20年遅れていますね。

笑っている父親でいよう

 「ファザーリング・ジャパン」のコンセプトは「父親であることを楽しもう」です。「良い父親ではなく、笑っている父親でいよう」ということ。ここが大事です。それは、仕事も子育ても自分の趣味も含めて自分の人生を肯定しているお父さん。誰かのせいにしたり、何かを犠牲にしたりとかいうことじゃなく、いろいろあるけれど、楽しんで前向きに生きているお父さん、それが笑っている父親だと思います。個人、特にお父さんの意識改革を目指しています。一方でターゲットは企業だったり行政だったりします。個人の意識が変われば、父親の自立につながります。子育てを通して一人前の生活者になる、市民になる、これが大事だと思っています。

子どもができたらOS(父親ソフト)を入れ替えましょう。

 OSとはパソコンのオペレーションシステムのことです。父親になると意識した時、大体モデルにするのは自分の父親で、自分を育ててくれた父親のやり方、価値観が思い浮かびます。しかし、それは30年前のOSだったりします。そのため、たちまちフリーズしてしまう。女性は子どもができたとたん自動的にアップグレードします。

義務から権利へ、客体から主体へ

 子育ては義務の面はあれども、楽しい権利。主体的に自分が何をしないといけないかわかることが大切です。そのためには、男の育児は質より量が必要。量をこなしてこそ、いい質が見えてくる。急激な都市化、核家族化、地域社会の崩壊、こういう中で母親は一人で子育てをしています。だから、パートナーであるお父さんは子どもに対して背中だけじゃなく、前も見せていこう、笑顔を見せていこう、頭の中も見せていこうよと僕らは言っています。

子育てパパは仕事もできる。ここが結構大事です。

パパ

最近は企業の成果主義の中で、子育てができないと悩んでいるお父さんがいます。「ワーク・ライフ・バランス」は大きなライフの中にワーク、子育て、キャリアアップの勉強、地域活動、趣味などがくる関係じゃなきゃいけない。一般的なイメージはやじろべえ型で、片方に仕事、片方に子どもがいたりします。こっちを取るとあっちが犠牲になる。これは非常にストレスフル。「ワーク・ライフ・バランス」は労務管理ではなく、自分の生き方の問題です。大きな鍋の中に、仕事や子育て、介護、勉強・・・といった具材が混在している寄せ鍋で各具材のいいだし汁がブレンドされます。こういう考え方をもってほしいです。

地域活動を通じて、シチズンシップを獲得しよう。

 子どもを持つと視点が変わります。例えばこの交差点は信号が短い、ガードレールが無いなど。事故が無いと行政は動きませんが、僕らは事故を未然に防ぐために行政に働きかけていくことができます。僕は地域のお父さんたちと協力して、学校統廃合問題から学校を守りました。その後もパパたちは自然に学校に顔を出したりしています。

パートナーシップの構築~妻の人生は夫のものではない。

 妻の人生は夫のものじゃない。ママがどう生きていきたいのか聞いて、それを理解してサポートするということが大事です。これが笑顔のお父さんになる秘訣です。子どものためには、ママと子どもの繭のようなくっついた関係をどこかで断ち切ることが必要です。子どもは自立と依存を繰り返して成長します。だから子どもはママが笑っていれば「パパがいるからママは大丈夫」と安心して繭から出て行きます。そのためには、パパがママと向き合うことが大事です。今、繭から出られない子どもが増えています。だから20歳代でいきなり繭の外に出て会社に行って、理想と現実のギャップに立ち向かえず、心が複雑骨折して、出社拒否、過労、うつになる。ゲームのリセットのように会社を辞めてしまうんです。

パパたちの本音トーク

セッションの様子

安藤哲也さんを囲んで、子育て中のパパを中心に子育てを終了した大先輩のパパまで19名で本音トークを開催しました。子どもとのエピソードやそれぞれの子育ての問題など熱く語り合いました。

安藤さんからのメッセージ

コピー

安藤 哲也 さん

安藤哲也さん

1962年生まれ。明治大学卒業後、出版社に入社。書店営業で全国の書店を歩く。94年、書店員となる。東京・大塚の田村書店の3代目店長に。96年、東京・千駄木の往来堂書店をプロデュース。初代店長を務める。00年、オンライン書店bk1へ移籍。02年まで店長。その後、糸井重里事務所を経て、03年、NTTドコモの電子書籍事業へ参画。04年、楽天ブックスの店長に就任。07年10月退社。06年11月、父親子育て支援・自立支援事業を展開するNPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ、代表に選出・就任。パパ’s絵本プロジェクトメンバー。著書に『本屋はサイコー!』(新潮社)『絵本であそぼ!』(小学館)『パパの極意』(NHK出版)がある。


NPO法人ファザーリング・ジャパン

NPO法人ファザーリング・ジャパンへのリンク(外部リンク)外部リンク

「Fathering=父親であることを楽しもう」という考えを持つ若い世代の父親を支援し、働き方の見直しや企業の意識改革、次世代の育成までを目標に、さまざまな事業を展開している。