第3回 いつまでも元気で、素敵な女性でいるために!  自分でできるケア!

今まで二回にわたり、女性ホルモンについてお話をしてきました。女性にとって女性ホルモンがいかに大切か、そして、二つの女性ホルモンのバランスを保つことが健康を保つ秘訣であるということもおわかりいただけたと思います。それでは、具体的にどんなことに気をつけて日々の生活をおくるのがいいのでしょうか?今回は最終回です。

1.まずは自分の状態を知ることから。

  基礎体温(BBT:Basal Body Temperature)をつけてみましょう。以前にもお話ししましたが、月経のある年齢層では基礎体温と女性ホルモンは密接な関係にあり、基礎体温をつけることで自分の状態が把握できることはもちろん、治療の大きな助けになることもあります。10歳代後半からの記録をおすすめします。

2.ちょっと大変だけど、日々のストレスをためない工夫を!

  現代人はいろいろなストレスにさらされています。持続するストレスは健康の大敵、女性ホルモンにも大きく影響します。ストレスをためないことが一番大切なのですが、なかなかむずかしいですね。

  • 責任感が強く
  • 完璧主義の人
  • 神経が細やかで気配り上手な人
  • 感受性豊かな優しい人
  • なんでも「いいよ」と言ってしまう、「NO」とは言えない人
  • 地位や肩書に依存している人

このような性格の人が比較的ストレスをためやすいと言われています。
 私達現代人は職場、学校、家庭の人間関係など、さまざまなストレスの中で生きています。このような日常のストレスから逃避したり、なくすことを目指すよりも、柔軟に対応し、上手に受け流していくことが大切です。余暇の取り方や趣味など、自分に合った対処方法を元気な時からのんびり考えておきましょう。

3.バランスの整った生活、バランスの良い食事! 女性にとって欲しい栄養素は?

 不規則な生活をしていませんか?「食事」「睡眠」「運動」など生活習慣を正すことでホルモンのバランスが整ってきます。まずは偏った食生活をしていないか、一日の食事内容をチェックしてみてください。ファストフード、コンビニ弁当、野菜不足、極端に辛い食事、甘いものの多量摂取など気になる点はありませんか?
こういう食生活を続けているとホルモンバランスが崩れ、疲れやすい、イライラ、月経トラブルなどを招きます。また、多量の飲酒や喫煙によりホルモンバランスが崩れ、閉経期が早まることがあります。毎日の食生活を見直し、ちょっと
気を使うだけで体調が変わってきます。
  数年前から、女性には女性ホルモンと同じ働きをする大豆イソフラボンの摂取が良いと話題になっています。そのほかにも女性ホルモンの分泌を促すビタミンB6、ビタミンEが注目されています。大豆イソフラボンは納豆や豆腐といった大豆製品に、ビタミンB6はマグロ、カツオ、鮭、バナナ、ナッツ類に、ビタミンEはアボガド、うなぎ、カボチャ、ほうれん草、ナッツ類に多く含まれています。これらを積極的に食事に取り入れてみましょう。ただ、イソフラボンの摂取には落とし穴があります。イソフラボンは腸内細菌によってエクオールという物質に変換されてはじめて女性ホルモンに似た作用を発揮しますが、日本人の約半分の人にはイソフラボンをエクオールに変える腸内細菌がいません。頑張ってイソフラボンを摂取しているつもりでも効果がないということもあり得ます。そこで、エクオールの効果はエストロゲンの100分の1から1000分の1程度と言われていますが、その効果は立証されていますので、直接、エクオールをサプリメントで摂取するという方法を選ぶのもひとつの方法でしょう。
  また、女性ホルモンによる影響を受ける骨についても気を配る必要があります。腰の曲がっている高齢者はほとんどが女性です、また、大腿部骨折も圧倒的に高齢の女性が多いのです。骨密度は18歳くらいでピークに達しますが、閉経期をむかえると急速に低下していきますので、閉経のころに一度骨密度を測定することをおすすめします。丈夫な骨を維持するためにはやはり食生活が大切です。カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨密度を維持する栄養素を積極的に摂りましょう。カルシウムとビタミンDは同時に摂ることで腸管でのカルシウム吸収率がよくなります。また、ダイエットによる栄養不足は骨粗しょう症の原因の一つです。特に思春期は骨を作る大事な時期で、このころの無理なダイエットが将来の骨密度に大きな影響を与えます。ちなみにダイエットについてですが、過剰なダイエットは体脂肪率を急激に下げ、女性ホルモンのバランスを崩します。生理が止まり、不妊の原因となることもあります。逆に、過食による肥満では過剰な脂肪が女性ホルモンの代謝の障害となり、子宮内膜がんのリスクとなることも覚えておいてください。

コンビニ弁当
ダイエットをする女の子

4. 体を温めましょう!

 冷えは女性の大敵です。女性の体全体が丸みをおび、男性より多くの脂肪を蓄えているのは子どもを産み育てるという女性本来の特性です。おなかの脂肪も妊娠中の胎児を保護したり、大事な臓器を保護するためにも必要であると言われています。ところがこの大切な脂肪には一度冷えると温まりにくい性質があり、男性にくらべて熱を発生する筋肉量が少なく脂肪量の多い女性にとっては冷えの原因のひとつとなります。冷えは血行不良を招き、体温の低下はホルモンの分泌にも影響をおよぼします、また、ホルモンの分泌低下が自律神経に影響しさらなる冷えにもつながってしまうのです。体を冷やさないために注意すべきことは

  • 服装や場所に注意して体を冷やさない
  • 運動不足を解消して筋肉をつける
  • 温かくなる食べ物を摂取する

ビタミンCやビタミンEを多く含む豆類や根菜類(人参、レンコン、牛蒡)など
血行を促進する成分を含むしょうが、ネギ、玉ネギ、唐辛子、ニンニクなど
若い時から体を冷やさないように心掛けてください。

しょうが

5.適度な運動を

 運動には筋肉量を増やし、体を温める効果もあることは申し上げましたが、適度な運動がエストロゲンの分泌にも影響することが証明されています。小さい時から運動をしている女子は、初経が遅く生涯の月経回数が少なくなると言われています。しかし、アスリートのような激しい運動をする人はエストロゲンの分泌も悪く、なかなか月経の来ない人が多いようです。また、定期的に運動をしている人は、していない人に比べて更年期障害の症状がずいぶん軽いようです。過剰にならない適度な運動は女性ホルモンのバランスを整えてくれると同時にストレス解消にもなるでしょう。

6.受けなくてはいけない!と思いつつもハードルの高い「がん検診」について

 「閉経したら婦人科検診は受けなくてもいいんですよね?」私が外来診療をしている時にこんな言葉をよく耳にします。婦人科検診は本当に避けられれば避けたいものだと女性なら誰でも思います。「あの内診台にあがるのがねえ・・・」お気持ちはよくわかります。また、乳がん検診についても「マンモグラフィーってすごく痛いし、あんなのもう嫌!」と、皆さん口をそろえておっしゃいます。確かにちょっと痛いですよね。でも、子宮がんも乳がんも検診を受けることで発見される確率が非常に高いのです。(図1)
 がんは早期発見できれば早期治療により元の生活に戻ることが容易です。「誕生日を検診の日に!」など、日常の行事のひとつとして取り入れてみてはいかがでしょうか?ところで、「あの人は毎年検診を受けていたのに、がんが見つかったらもう進行していたんだって。そんなことってあるのかしら?」などと耳にしますが、残念ながらあります。多くのがんはある程度の年月をかけて成長し、いわゆる「進行がん」になりますが、まれに検診と検診の間、わずかな期間で急速に進行するようながんが存在することも事実です。検診で「問題ないですよ」と言われていても、なにか気になる症状があれば検診を過信せず、受診してください。また、乳がんの60%はセルフチェックで見つかっています。入浴時や寝る前など、一か月に一度は触ってみる習慣をつけましょう。

乳房
24人(0.24%)
大腸
16人(0.16%)
子宮体部
子宮頚部
13人(0.13%)
13人(0.13%)
1人(0.01%)
5人(0.05%)

図1 2014年の日本対がん協会の報告による、1万人検診受診者中がん発見者数人(%)

最後に.自分が心置きなく相談できる家庭医をつくっておきましょう。

 みなさん、3回にわたる女性講座はいかがでしたか?女性ホルモンの事や今の自分の体の状態を知る事で、慌てることなく冷静に体調の変化を受け止める事ができるといいですね。
 さあ、さっそくトラブルが起きる前に日々の生活の改善を試みてください。
また、今、一人で悩んでいる人は、一度産婦人科や外科のドアをノックしてみてください。案外簡単に解決できる悩みかもしれません。

いくつになっても、心身ともに輝く女性を目指し、元気でがんばりましょう!

手書きの少女