みえアカデミックセミナー2023 近畿大学工業高等専門学校公開セミナー「タイ王国アユタヤの歴史的レンガ造仏塔のはなし」の事業報告

開催日
2023年7月26日(水曜日)
開催時間
13時30分から15時00分まで
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
講師
近畿大学工業高等専門学校 総合システム工学科 都市環境コース 教授 石田 優子さん
参加人数
66名
受講料
無料

「みえアカデミックセミナー」は、三重県総合文化センターを会場に、三重県にあるすべての大学・短期大学・高等専門学校の高等専門機関全15校が有する高度な学びと県民の皆さまをつなぐ一大連携事業として開催されている公開セミナーです。
毎年7月と8月に各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすくご講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」(1996年スタート)を経て、「みえアカデミックセミナー」としては、今年ついに20年目を迎えました。
これからも三重県内の皆さまに、たくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。


令和5年度の近畿大学工業高等専門学校 公開セミナーは、総合システム工学科 都市環境コース  教授 石田 優子さんを講師にお迎えしました。

講師写真
総合システム工学科 都市環境コース  教授 石田 優子さん

**************************【講演概要(チラシ紹介文より)】
タイ王国にはアユタヤ王朝時代(1351-1767)に造られた歴史的レンガ造建造物が多く遺されていますが、劣化や倒壊などの深刻な問題を抱えています。本講演では、保全のために調査したクラサイ寺の仏塔を例に、何故レンガは劣化するのか、何故仏塔は傾いたのかについてお話しし、遺産の保全について考えます。

講師メッセージ(講師一覧紹介文より)
世界遺産の制度は、存亡の危機にあったエジプトの貴重な遺産を守ろうとしたプロジェクトから始まりました。東南アジアには、レンガでできた遺産が数多く遺されていますが、その修復や保全方法は確立されていません。本講演では、倒壊が危ぶまれるタイのレンガ造仏塔に焦点を当て、昔のレンガの特徴や劣化のメカニズム、また何故仏塔は傾いたのかを、現地で行った調査を交えてお話しします。
文化遺産は全世界共通の宝ですが、それをどのように守り、後世に継承していくのかは、時代によっても、国や地域によっても、考え方が異なります。貴重な遺産を保護するより良い方法について皆さんと考えられたらと思います。

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講演の様子

世界遺産の街として知られるタイの古都アユタヤ。約400年続いた王朝時代の遺跡群の多くは、18世紀後半のビルマ侵攻により破壊されました。現在残る遺跡群は、アユタヤ歴史公園として整備されていますが、貴重な文化遺産の保全は必須となっています。

講演では過去の洪水被害による地盤の不安定さに触れたうえで、レンガ造構造物の抱える問題として「構造物の沈下・傾斜」と「レンガの劣化」の二つを挙げられました。
「沈下・傾斜」については地盤調査をし、現状把握に加えて将来的な傾きを予測し倒壊防止の対策をとる必要があります。その際、文化財保護の観点から傾きを維持したまま対策をとることについて説明されました。

「レンガの劣化」についても、文化財は元の素材を使用することを原則とするため、昔ながらの製法で修復を行います。そのため困難もあるが、レンガ表面の保護や、排水計画などに工夫をこらしていることを説明されました。
また、休憩時間には講師の石田さんによるタイ国歌のバイオリン演奏が行われ、初めて聴かれた方や、旅行した時のことを思い出された方など、参加者はそれぞれタイの地に思いを馳せていました。現地に何度も足を運び、実際に調査をされてきた講師のお話を聞くことのできた貴重な機会となりました。

参加者の声

  • 建物の傾きが地盤沈下というのはつい単純に考えてしまいがちですが、レンガの劣化という問題があるということで、驚いたのですが、物事を考える時に多角的な視点が必要ということを学びました。
  • とても興味深いお話でした。文化財保護については様々な問題があることが理解できました。
  • 暑い国での地道な調査研究のお話大変勉強になりました。先生のバイオリン演奏まで聞くことが出来て良かったです。