三重県総合文化センター開館20周年記念事業
ファザーリング全国フォーラム in みえ 
タイアップイベント男女共同参画強調月間 ff(フォルティッシモ)
ダイアモンド✡ユカイ トーク&ミニライブ

開催日
2014年6月8日
開催場所
三重県文化会館 中ホール

今年度の「男女共同参画強調月間ff(フォルティッシモ)」のファンファーレ・イベントは、ロックシンガーダイアモンド✡ユカイさんが登場!冒頭は鈴木英 敬三重県知事も参加し、男性の不妊治療の実態や日々のイクメンぶりについて、NPO法人ファザーリング・ジャパン事務局長の徳倉康之さんと対談いただきました。

せりから登場した3人
せりから登場した3人。
知事、ユカイさん、徳倉さんの3ショット
知事からは三重県の取組についてお話しいただきました。

オトコの不妊治療

徳倉 ご自分の不妊を知ったときは?
ユカイ

知った時の衝撃は声がでなかった。
ずっと自分をヒョウだと思っていたけど、鏡を見たらネコだと思った(笑)。それくらいの衝撃を受けたね。

徳倉 そういう時こそ夫婦のコミュニケーションが必要だと思いますが。
ユカイ 自分はもう子どもが持てないと思っていた。妻は「ユカイさんが子どもみたいな人だから」と言ってくれたが、余裕がなくて優しい言葉も受け入れられなかった。
徳倉 男性の不妊治療と言っても様々ですよね。
ユカイ 俺のように無精子症だと手術をしなければいけない。恐怖感はもちろんあった。男って情けないんだなと、前日はまるで死刑執行のような気分で。さっき知事も 言ってたけど女性の不妊治療の方がはるかに大変。かなりの痛みを伴う治療もあるし、更年期のような症状がでたりもする。俺たち夫婦の間では離婚寸前まで いったり、子どもがいなくても2人でどう生きていこうかと話したり…。そこで妻がもう一度挑戦したいと言って、娘を授かることができた。今でも娘の笑顔を 見ると意味もなく涙が出てくる。

子育てって楽しい!

徳倉 ユカイさんは1女2男のお父さんですよね。私も娘がいるのですが、本当にかわいいですよね。
ユカイ

 女の子はほんとにかわいいし楽。次が双子の男の子だったから、宇宙人が出てきたかと思うくらい大変で(笑)。

徳倉

少し私の話をしますと、2009年初めて育休を8か月取得しました。当時は本当に先駆けでしたから、その年リーマンショックが起こったこともあり、近所で は「徳倉さんリーマンショックの影響でクビになったらしい」と噂が立ったり、ママたちからは妻に逃げられたと思われていたのか声をかけてもらえなかったり (笑)。まあ『イクメン』という言葉が流行語を取ってここ数年は変わりましたが。
そういう世の中の変化の中で、仕事への向き合い方とか家族への向き合い方とか変化はありましたか? 

ユカイ それは人間日々成長してるからね。娘が生まれたことで、どんなに夜が遅くても、必ず朝起きる朝方ロッカーになった。妻が双子を産むときに入院しなければいけなくて、娘と一緒に寝ていたんだけど、そんなパパ大好きな娘でも、ママを探して夜中に『ママー』と呼んだりする。
それを見ると「ああ、男って弱いな」と(苦笑)。
徳倉 自分も妻が不在で子どもたちと2泊3日過ごした時、大人と話したのは宅配便のお兄ちゃんだけ。それに気づいたとき、こういう生活が続くと育児ノイローゼになるなと感じました。
徳倉 ユカイさん得意の子どもとのふれあいは?
ユカイ  最初は…沐浴かな?子どもが生まれたころから沐浴だけは誰にも負けない!と。なんでも一点突破なんで(笑)。はじめは首がすわってないし怖くって。失敗 して沐浴禁止令を出されたんだけど、「沐浴だけは俺にやらしてくれ!」と頼みこんだ。そこから這い上がって、そして『沐浴キング』の称号を得た(笑)。そ れからは、ただ入れてるだけではなくて子どもが気持ちいいようにって考えたり、今は一緒にお風呂に入っていて、もう何でも来いって感じ。
徳倉  実は、日本の男性が育児を学ぶ機会は欧米諸国に比べるとほとんどないんです。母親は妊娠した時に母子手帳をもらい出産前に母親学級で学ぶ。現在は市区町村 よっては両親学級を開いていますが、男性の学ぶ機会は5コマある中の1コマで、15分程度の沐浴体験とか妊婦体験などにとどまっています。産後の産褥期 (さんじょくき)の妻にどんなケアが必要か、女性の体がどう変化していくのか学ぶ機会はないんです。
ユカイ 身体のバランスが変わるもんね。
ユカイさんがしゃべる画像

妥協じゃなくて理解すること

徳倉 困難を乗り越えた家庭は、夫婦でよく話し合ったり、夫婦のパートナーシップ、絆が強いなと感じます。ユカイさんはどのようにご夫婦でコミュニケーションを取られていますか?
ユカイ

なかなか難しいけど…。家はいま動物園状態です。子ども3人だと一人は死角に入ってしまう。
自分は家にいないことも多いので、妻は本当に大変だと思うんです。そんなことも含めて、お互いにわかっていながら足の引っ張り合いになるときがある。そん なときに思うのは、口で言うのは簡単なんだけどね、妻に対して「妥協じゃなくて理解すること」だと考えている。

徳倉 なるほど。理解するために工夫されていることは?
ユカイ もめごとまでは行かないけど、そうなったときには自分を見つめ直す。今まで自分にとってダイアモンド✡ユカイ、歌っていくことが人生の全てだった。でも今は 家族ができて、妻や子どもがいなかったら明日生きていく意味もない。そう思うとどんなに大変でも自分の気持ち次第でいくらでも変えられるんだなと、そうい うのをたまに考えている。
徳倉 実は、日本では制度は整っていても風土が伴わず進まないことがあります。男性の育児休業取得や女性の社会進出も、女性はこれ以上頑張れないところまで頑 張っていても、男性の働き方が長時間勤務のままだと女性が働き続けられない。ワーク・ライフ・バランスと最近よく言いますが、男性は早く帰れないと言いま す。でもそうではなく、やってみると意外とできることが多いんです。先ほどの不妊治療にしても、もっと男性は声に出して言っていくべきだと思います。仕事 でも生活でも、男性女性ではなく、夫婦の役割分担、パートナーシップで話し合っていくことが大切ではないかと考えています。

楽しくポジティブに!

徳倉 家族ができて、アーティストとして変化を感じるところはありますか?
ユカイ

187度位変わりましたね(笑)。今まではドクロとヒョウ柄の世界に生きてきた自分が、子どもを授かって、そのころでは思いもしなかった世界が、こんなに キラキラして楽しいものだったんだと感じることができた。長女がくまのプーさんを見て笑うんだよね、それを見てプーさんってすごいなと。今ではプーさん大 好きですよ(笑)。子どもの目線になったら違うものが見えてきた、今では自分が楽しんでいる。

徳倉 男性は育児より家事をやった方がいいと思うんですよ。家事はマイナスをゼロに戻すことが多く、しんどいことが多い。ファザーリング・ジャパンではいいとこどり育児はやめて家事をしようと言っているんです。これで家庭内の雰囲気が良くなればいいんじゃないかと。
ユカイ それは大きいね、機嫌が良くなるかな。
徳倉 それが大変なら裏ワザがあります。食洗機を買うとか、ロボット掃除機を買うとか(笑)
ユカイ なるほどね(笑)。
今は育児だけど今度は教育になっていくよね。いま日本の教育はどうなってるんだろうと、そういうところも踏まえてやっぱりお父さんお母さん大変だなと。諦 めていたところに子どもを授かることができたからには、自分ができることは全部やってあげたいなと思いますよね。
徳倉 今日のユカイさんのお話を伺っていると、いろんなハードルを越えていく中でも、チャレンジをしていこうとか楽しもうとかポジティブな気持ちを感じますが。
ユカイ まさにその通りで、高杉晋作の言葉『おもしろき こともなき世を おもしろく すみなすものは心なりけり』じゃないけど、自分の心次第で面白くも、「ダイアモンド✡ユカイ」にも「ダイアモンド✡フユカイ」にもなるということです (笑)。今までじゃ考えられなかったけど、ファザーリング・ジャパンみたいに、パパたちが立ち上がって子育てとか教育とかに力を入れている。時代とともに ファッションも食べ物も育児も変わっていく。人間はいまを生きているわけですから、楽しく前向きに、年をとっても妥協ではなく理解ってところにたどりつけ たらなあと思っています。

さらにトークの後には、ユカイさんに「君はともだち」と初披露の「ムクロジの木」、2曲を歌っていただきました。お越しいただいた皆様にも、ユカイさんの前向きで何事も楽しむ姿勢を感じていただけたトーク&ミニライブとなりました。

ダイアモンド✡ユカイ さん (ロックシンガー)

 1962年東京生まれ。1986年、伝説のロックバン「REDWARRIORS」のボーカルとしてメジャーデビュー。人 気絶頂期の1989年わずか3年の活動で日本武道館公演を最後に解散。その後、「ダイアモンド✡ユカイ」として、ソロ活動を開始する。現在は音楽活動を中 心に舞台・映画・バラエティー番組に出演するなど幅広く活動する。
「タネナシ。」を発刊し大きな反響を呼んだ。同年11月には双子の男の子も誕生し、現在1女2男の父親。昨年は「タネナシ。」の続編として愉快な子育てを 写真と共に綴った「育爺。」も発売。また11月にはカバーアルバム第二弾「RESPECTⅡ」も発売。本年7/25にはNHK「みんなのうた」で流れてい た新曲『ムクロジの木』を発売した。

ムクロジの木のCD画像

徳倉 康之 さん
(NPO法人ファザーリング・ジャパン事務局長)

1979年12月27日生まれ、香川県出身。法政大学法学部法律学科卒業後、約10年間大手日用雑貨メーカーで広域量販 法人営業を担当。在職中、男性社員として初めて09年に8ヵ月、11年に2ヵ月の育児休暇取得を機に、FJ(ファザーリング・ジャパン)会員を経てFJ事 務局に入局。事務局長として主に法人会員担当、企業との協働案件・講演・イベントのプロデュース担当。「笑っている父親が社会を変える」をミッションに、 ソーシャルビジネス営業として企業とNPOの協働に力を注ぐ。
現在3児の父。
内閣府男女共同参画連携推進議員、埼玉県男女共同参画審議会委員、埼玉県児童福祉審議会委員等

参加者の声

  • とても楽しく聞かせていただき勉強になりました
  • 歌もトークも最高でした!
  • 飾らない人柄そのままに本音トークでとても楽しめた
  • 男性不妊の事あまり知らなかったので少し理解できました
  • 私も何度も男性不妊治療を行った経験があり、興味深く聞かせていただきました
  • 男親の視点から見た子育てについての生の声を聞けてよかった