りょうがん所長のつぶやき

音の風景

93歳で亡くなった父は、旅立つ数年前から、
「おおきに、ありがとう」とやたら言うようになった。
その父が、アルバムに向かって声をかけている。
戦争のときの仲間や教師時代の仲間に、声をかけている。
「おおきによ・・ありがとうね・・」って、仲間の写真をなでている。
「ひとりになったよ・・さびしいよ・・。」
そういって、若かりし、時代に写った仲間の写真に語りかけ、
何度も分厚いアルバムを「パンパン」と音をたてて、見ていた。
多くの友がいなくなり、ひとりぼっちになっていく父は、
90を過ぎてから、ひたすら感謝の言葉をよく口にし、音を立てて、
アルバムをめくり、語りかけていた。
ぶっきらぼうで、何も言わなかった父。
その小さくなった後姿を見て、父なりに友を想い、
家族を想っていたのだと思うと、涙が流れた。 
長く生きていくことのつらさもあるんだよな、きっと・・・。
そうつぶやいたら、また、涙が流れた。 
父がめくるアルバムの音が、自分には、心の風景になっている。

「音の風景」産経新聞の朝晴れエッセイに
「母の足音」という心温まる音のお話があった。

「母の足音」 佐藤和心さん
「トン、トン、トン」 「ダッ、ダッ、ダッ」 「ゴロ、ゴロ、ゴロ」
2階で母の足音や戸を開け閉めする音が聞こえてる。
「ああ、生きてる、いきてる」と思う。

3年前の秋、父が亡くなった。2人暮らしだった家に母は、ひとりぼっちになった。
80歳を過ぎた母と同居することにした。
15年ほど前に、父の好みのまま立て替えた家。
畳の部屋ばかりだった古い2階建ては、3階建てに生まれ変わった。
私は、父が使っていた1階の部屋を頂戴した。
住み始めてみると、驚くほど2階の音が響く。
同居する前は、丈夫なマンションに住んでいた。上階の音などあまり聞こえなかった。 
母の足音の大きさにイライラして、もっと静かに歩くよう苦情を言った。
 
しかし、長年の習慣をそうそう変えることなど、到底無理。 
仕事が休みのある日、2階でまったく音がしないことに気づいた。
「あれ? どうしたんだろう? もしかして、倒れてる?」
あわてて2階に駆け上がった。こたつの上に置かれたラジオが聞こえる。
その前にぽつんと座った母は、うっつらうつらと居眠りをしていた。 
目が見にくくなった母は、テレビではなく一日中ラジオの前に座っている。
「な~んだ、よかった」と、思うと同時に騒音だった母の足音が、命の音に変わった。
「ドシッ、ドシッ、ドシッ」今日も力強い足音が聞こえてくる。

 *誰もが、心にもっている「音の風景」・・あなたはどんな音の風景が見えますか?
    
   万謝       三重県生涯学習センター 所長 長島りょうがん(洋)

心に刻まれた食事

ひとは、だれでも食事をして、生きています。その食事も、高価なご馳走であったり
たくさんの人と、楽しみながら食べる食事だったり、1人で寂しく食べるものだったり
病院で食べる食事であったり、それぞれの想いをのせて、食事をして、生きています。
あなたには、どんな食事が、心に刻まれていますか?

私も、東京で単身赴任中、コンビニで白いご飯とおでんを買って、レンジで温めて冬の
寒いときに、1人丸くなって食べていると、なんだか寂しくて、つらくて、泣けてきて
声をあげて、涙を落としながら食べた食事が、寒い風が吹くと想い出してしまいます。
 
ここに、「思い出に残る食事」 西村 博之さんのエッセイの中にあった
「母のおにぎり」を紹介します。
人は食べることで、幸せになったり、生きる力になったりする気がする・・・。

          「母のおにぎり」
おととしの、秋の話です。
私が小学校5年の時に家をでて、居場所のわからなかった母に、
祖母の葬式の時に、23年ぶりで、顔をあわせました。
そのとき、母の家に遊びに行く約束をしました。
その日は、私が料理を作りました。ハンバーグと肉じゃがと、簡単なサラダです。
2人で食事をして、お酒を飲んで、はじめは、あたりさわりのない話をしてましたが、
だんだん「なぜ、いなくなったのか?」という話になりました。
母は、たんたんと話します。
私も、母がつらくならないように、途中で、冗談をいれながら、聞きました。

帰るとき、「今日は、おかあちゃん、なんも できひんかってごめんな。」と
言ったので、私は「ほな、残ったご飯で、おにぎり作って!」と言いました。
母は「そんなんで、ええんか!?」と笑いながら作ってくれました。

帰り、駅からタクシーに乗りました。
今日のことを想い出しているうちに、不覚にも涙がでてきました。 
運転手さんがびっくりして、「気分悪いんか?」と聞かはりました。
私は、「いえ、なんか、嬉しくて、泣けてきちゃったんです。」と
泣き笑いしながら、運転手さんに、今日のことを短く話しました。

すると、運転手さんも、一緒に泣き出してしまいました。
「よかったな!よかったな・・・」と鼻水まですすってました。

家に持って帰ってきた、おにぎりは、冷凍庫にいれた・・・。
元気のない日に、1個づつ、大事に、大事に、食べました・・・。

    万謝
            三重県生涯学習センター 所長 長島りょうがん(洋)

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