三重県総合文化センター ブログ

取材ボランティアレポート みえアカデミックセミナー2017 オープニング 「生命を捉えなおす―動的平衡の視点から―」

講演風景

会場となった三重県文化会館中ホールは全く空き席が見当たらない満席状態であり、この講演を多くの人が待ち焦がれていたのだと強く感じました。私自身も、福岡さんが生物学者だと言いながら、フェルメールの絵について熱く語っておられるのを春頃テレビでみました。その方が講演に来られるということをチラシで知って、ぜひお話を聞いてみたいと思っていたのです。

福岡さん

福岡さんは小さいころから昆虫が大好きで、昆虫を追いかけ、その世界に魅せられていました。両親が顕微鏡を買ってくれたことは、友だちを作ってほしいという親の願いに反して、彼をますます生命の微小世界にひきつけていったのです。

大学に入り、細胞の遺伝子研究に興味を惹かれ、GP2という新種の遺伝子を発見されました。そのGP2の働きを確認しようとする長い過程の中で壁にぶつかったことが、ルドルフ・シェーンハイマーの「生命は機械ではない、生命は流れだ」という言葉を思い出したきっかけであると福岡さんは語っておられました。この考えが「動的平衡」であり、機械論的メカニズムではなく、一定の形を保ちながら動いていく生命をできるだけ長い時間軸の中で捉えようとする視点でした。福岡さんは今、ニューヨークのロックフェラー大学で客員教授を務めながら、「動的平衡」の考え方を推し進めていらっしゃいます。

会場の様子

福岡さんは、顕微鏡を初めて作ったアントニー・レーウエンフックと同じ年に同じオランダの町で生まれた画家フェルメールに興味を抱きました。さらに大学院卒業後、働いていたニューヨーク市でたまたまFrick Collection(個人美術館)をみつけ、そこでフェルメールの絵3枚に出会い、フェルメールの36作品(全37枚中1枚は盗まれている)をデジタルでリ・クリエイト※していくことになるという福岡さんの一連の歩みは、すべてが運命の糸でつながっていたかのようで感動せざるをえません。福岡さんがリ・クリエイトしたフェルメールの36作品をいつかぜひ見てみたいものだと思いました。微小世界をのぞきながら雄大な生命の流れを見つめ、夢をはせる福岡さんの魂のわくわく感を追体験させていただいたようで、とても楽しく夢のあるひと時でした。本当にありがとうございました。

【取材ボランティア 興味津々子】

※リ・クリエイト 絵画を最新のデジタルリマスタリング技術によって、描かれた当時の色調やテクスチャーを求めて再創造したもの

取材したイベント

みえアカデミックセミナー2017オープニング「生命を捉えなおす―動的平衡の視点から―」

講師 福岡伸一さん(青山学院大学 教授)
日時 2017年7月1日(土曜日)
会場 三重県文化会館 中ホール

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